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相続された実家を全面リフォーム?それとも建て替え? 自宅診断の活用事例紹介

相続された実家を全面リフォーム?それとも建て替え? 自宅診断の活用事例紹介

自宅診断は相続されたご実家の診断にも有効です

1.中古診断と自宅診断、その違いは?

私たちN(中尾建築研究室)のホームインスペクションのメニューは、大きく、新築診断中古診断自宅診断、そして住宅相談の4つです。

N研-中尾-
そのうち、時々次のようなご質問をいただきます。

中古診断自宅診断は、どちらも中古住宅(既存住宅)を扱うわけですよね。では、その両者の違いは

確かに両者とも既存の住宅が対象ですので、診断項目は同じような内容になりますが、両者の違いとして、診断の目的の違いを考えてみましょう。中古診断では、主に対象の住宅を売買する目的で行われるのに対し、自宅診断は、主に現在のお住まいの状態を把握する目的で行われます。

たとえば、購入判断のために行われる中古診断では、診断の依頼者様は一般にその住宅の所有者はではないので、その場に仲介業者様が立ち会ったりします。ご自宅を売却する目的のために診断するというケースも考えられますが、これはいわゆる売り手側のインスペクションと呼ばれるものです。

一方、自宅診断では、依頼者様がお住まいの劣化状況などを知ることによって、たとえば修繕の緊急度や、リフォームの優先順位を判断するために行われます。ご自分の住宅であり、売買などを前提とするものでもないので、第三者が立ち会うこともありませんね。家財などが置かれたままの「居ながら診断」というわけですね。

 

2.自宅診断は、相続されたご実家の診断にも有効です ~「相続した実家」をめぐる話題から

このように、自宅診断は比較的融通の利く住宅診断と言えますね。何よりもご自分の所有物であるからの融通性ですね。

ご自分の所有物・・・それは、突然ご自分の所有となった住宅である「相続した実家」もそうですね。

 

N研-中尾-
ではここからは、その「相続した実家」についてのお話です。

なお、結果からお伝えすると、今回は、テレビのリフォーム番組のような既存大改修によるハッピーエンド、とはならず、コンパクト化して建て替えという、いわばオーソドックスな結論となりました。

しかし、ご主人がその結論に踏み切られたのは、この自宅診断の報告の中にある、床下の蟻害の状況と、敷地裏手の擁壁のクラックに対する不安からだったとのことでした。この2点については、今回はじめて知らされたとのことです。

それでは、詳しくご説明して行きましょう。

そのご夫妻は、ご実家の母屋の隣にある「離れ」にお二人でお住まいでした。母屋はお母様がお住まいでしたが、ご相続後はご主人が2階をご自分の書斎(かつての勉強部屋)として、1階を客間(応接)として使っておられました。

ご主人はご長男で、子供のころからこの家で過ごされ、結婚を機に「離れ」に移られましたが、その後もずっと出入りしてきたご実家です。ご自身の成長の過程を刻み込んだ、記憶のかたまりのような場所です。

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(左)相続した実家、敷地裏手に沿って水路(一部加工してあります)、(右)チェックリストや図面

 

この相続した住宅をどうするか、というお話です。

ご自宅が別にあり、相続した実家を使うあてもなく、維持管理もままならい・・・と言う場合なら、いずれ売却というケースも多いでしょう。その場合なら、先ほどの売買目的の中古診断に近いケースと言えますね。

しかし、このお宅の場合は、同じ敷地内の母屋。しかも、現在のお住まいの離れは、手狭で経年的な劣化も目立ちはじめています。ご夫婦お二人だけのお住まいとしては、この先母屋と離れの二棟は多すぎるので、一棟にすることをお考えでした。

ご主人のお考えは、母屋を建て替えるか全面リフォームするかして、そちらに移り、その後、現在の離れの土地を分割して売却・・・建て替え費用の一部に充当しようというお考えでした。

かなり以前になりますが、すでに他社による震診断は受けていらっしゃいました。その結果を拝見したところ、上部構造評点は0.4代(少なくとも1.0以上が望ましい)、基礎の補強耐震壁の追加がアドバイスされていました。このくらいの古さの中古住宅(既存住宅)では、耐震診断の結果はたいていこのようなものとなります。

 

3.ご実家を拝見、そして課題整理と今後の進め方検討

そうしたお話をうかがった上で、母屋を拝見しました。書斎の机上には書籍や書類、客間には応接セットや飾り棚・・・ご実家の居ながら診断ですね。

そこでいくつかの課題が分かりました。主要なものを取り上げて見ますと・・・

  1. 【敷地状況】敷地裏手の擁壁に深いクラック(ひび割れ)が見られたこと
  2. 【蟻害】床下などに蟻害(シロアリ被害)が見られたこ
  3. 【耐震性】柱・梁の継手の金物が不足、また筋交いなど耐力壁が不足していること
  4. 【断熱性能】床下・天井裏が無断熱で、開口部(窓)のガラスが単層で、断熱性能が不足していること

などがありました。順に見てゆきましょう。

 1.まず、母屋の敷地を拝見したところ、敷地の裏手に、建物に沿って水路があり、そこに高さ1mほどのコンクリート製の擁壁(土留め)があり、その数カ所に上から下までつながる深いクラック(ひび割れ)が見られました。母屋の基礎は敷地の土の上に乗っていて、この擁壁はその土圧の一部を受けているので、擁壁を構造的に支障ないように補修するか、あるいは、擁壁に影響されないように杭を設けたり、基礎を深くするなどの処置が望まれます。

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(左)水路側擁壁の状況、(右)擁壁のクラック(ひび割れ)の状況

 2.室内では、母屋の1階には床下点検口は見当たりませんでした。そこで和室の畳をめくってみたら、荒床(畳の下の板敷き)の一部が外れたので、そこから床下を拝見したところ、木製束に沿って蟻害(シロアリの被害)が見られ、上部の大引きまで蟻道が見られました。また台所の一部木部にも蟻害と思われる箇所が見られました。床下の土間は土のままで、防湿・防蟻対策等はされていませんでした。

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(左)床下蟻害の状況、(右)台所付近蟻害の状況

 3.以前の耐震診断の報告書にも触れられていましたが、この年代の住宅では多くがそうなのですが、柱・梁などの接合部に金物が見られないこと、また、筋交いなど耐震壁がほとんど見られ耐震性に不安があります。

 4.そして、断熱性能の観点からは、床下や天井面に断熱材が設けられておらず、窓開口は単層ガラスとなっているため、断熱性が劣り、省エネ的にも熱のロスが大きいお住まいとなっていました。

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(左)床下の状況、(右)天井裏の状況

 

住宅が古いため、耐震性能が低いことはすでに耐震診断の結果からお分かりでしたが、床下そして台所の一部に蟻害が見られたこと、さらに、敷地裏手にある水路の擁壁が脆弱なことも不安材料となりました。加えて、現在の基準からすれば断熱性能が極めて低いこと。また、後から増築した浴室と脱衣室部分は老朽化がかなり進行しているため、この部分は全面撤去して新設が必要なこと、なども分かりました。

もしこれをリフォームするとすれば、まず耐震診断の指摘のように基礎を補強する必要がありますが、その際敷地裏手の擁壁に影響しない範囲まで補強しておくのが良いでしょう。次に、床下の土間にコンクリートを打設するなどして防湿・防蟻対策を行い、蟻害を受けた木部を取り替え、防蟻処理を行います。地震時に柱が土台から抜けでしまわないように、基礎と柱を金物(ホールダウン金物)で固定します。その他の継手にも金物を追加し、筋交いや構造面材で耐震壁を作ります。また、床面補強して地震・台風時の水平力に耐えるようにします。

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金物の例

 

これらは主に耐震改修と呼ばれる工事ですが、これに合わせて居住性と省エネ性能を向上させるためには断熱改修を行います。窓サッシュ・ガラスを断熱性のあるもの(複層ガラス入りの樹脂サッシュなど)に交換し、その上で、1階床下、外壁、2階天井裏に断熱材を敷設します。そして、外壁の老朽化した金属板をサイディングなどと交換しますが、その下地部分に通気層を確保して通気構造とします。

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(左)断熱サッシュの例、(右)通気胴縁の例

屋根の瓦自体はまだ使えなくもないとも言えますが、瓦のような「重い屋根」を金属製や化粧スレートなどの「軽い屋根」に改修することも、耐震の点からは望ましいと言えます。また2階天井に雨染みが見られたので、屋根下地まで含めた状況確認と必要に応じた補修はしておいたほうが良いと思います。

いずれにしても、リフォームする場合のご希望として最初に言われた、充分な耐震性能と断熱性能の確保のためには、構造体だけを残してフル改修する、いわゆるケルトン(骨組み)リフォームが必要と言えます。

 

4.検討の結果と方針 ~ その背中を押したもの

話は進んでさらに、2階部分を撤去して平屋にする「減築」の話題まで飛び出しましたが、結局、ご主人から、「それならば、やはり・・・」ということで、コンパクトな平屋建の新築にして、耐震性と省エネ(断熱気密化)に力点を置きたい、という方向に傾かれました。

ご夫妻のお考えをまとめると、今後の住まいにはまず耐震性を求めたいとのこと。それも、もし大地震が来ても、避難所に行くことなく住み続けられる家にしたいとのこと。その上で、断熱性能の高い快適な住まいで、かつエネルギーロスが少なくランニングコストを抑えられる住まいとしたいとのお考えです。

実のところはすでに、既存撤去して小規模平屋新築という検討もかなり進められていて、今回の診断の結果をふまえて、最終的に決断されたということでした。

結論的には、要求仕様として、住宅性能評価の尺度で言うところの、耐震等級3省エネ等級(断熱等性能等級)4などを目標とすることになりました。

今回は、性能向上を目指して全面リフォームという方向ではなく、住宅性能の高いコンパクトな住まいに建て替えという、むしろオーソドックスな結論となりました。しかし、はじめにご紹介したように、ご主人がその結論に踏み切られたのは、今回の自宅診断報告の中にある、床下の蟻害擁壁のクラックに対する不安からでした。蟻害クラックも、以前の耐震診断の報告書には記載がなく、今回はじめて知ったとのことです。

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いわば、私たちの言う「見えないところ」に気づかされたというわけですね。

実家に対する愛着というのは、他人から見る住宅の姿とは異なり、単純に撤去建て替えを選択させるとも限りません。今回は、それを敢えて絶ち切るだけの材料を提示されたから、ということでしょう。

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(左)クラック補修状況、(右)母屋撤去時の状況

今回は、相続住宅にも自宅診断をおすすめの一例のお話でした。

 

「お住まいも健康診断を」「相続住宅にも自宅診断を」・・・これが私たちN研(中尾建築研究室)のおすすめ

お住まいも健康診断を

N研-中尾-
お身体と同様に住宅も定期的に「健康診断」を、というのが私たちN(中尾建築研究室)のおすすめですが、相続された住宅も「自宅診断」を、というのもおすすめです。

 

そして、実は今回の建て替えのお話には続きがあります

ウチの長期優良とそうでない住宅の具体的な違いって、何処なのだろうね?
(N件(中尾建築研究室)ホームページ コラム「『長く住める住宅』について考える」 より)

お住まいの「質」への意識の高いこうした方々を、私たちは微力ながら応援したいと考えています。

 

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