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木造 軸組工法と 2×4 (ツーバイフォー) その違いとは?

軸組と2×4~今回は、よく知られたこの二つの工法について考えます

1.定番の比較テーマ:木造の「軸組工法」対「2×4(ツーバイフォー)工法」

N研-中尾-
今回は、私たちN住宅相談でもときどき話題になるテーマです。

ですので、このテーマ、ご覧になられて「またか・・・」と、お感じになった方もお見えになるかも知れませんね。

そのくらい、住宅の蘊蓄サイトや住宅提供者様のサイトなどには、木造の在来軸組工法2×4(ツーバイフォー)メリット・デメリット比較が溢れていますね。

一番よく見かけるのは、計画の自由度が高い軸組工法地震に強いツーバイフォー工法といった比較でしょうか。

結論を先にお話ししますと、この種の比較は、今でもセールストークとしては良く使われているかもしれませんが、現在ではあまり意味がありません。かつてほど、この両者の工法がもたらす性能的な差異がなくなってきているからです。

この「現在では」というところがポイントで、以下、順にお話しします。

その前に、まず両者の概要のお話から。(両者の違いが、だいたいお分かりの方は、次の章に飛んでも大丈夫です)

線(軸)で支える軸組工法」と「面で支える2×4(ツーバイフォー」という対比表現も多いですね。

おおざっぱにお話ししますと、木造住宅軸組工法とは、を立てて桁・梁(横の材)を架けて、屋根を組むという作り方です。基礎ができあがると、あっという間に組み上がり、屋根までできてしまいます。(ここまでを下に図でお示しします。右回りです)それから外壁が貼られます。多くは足場があるので良く見えないかもしれませんが、比較的おなじみの作り方です。

のように、木造の柱、梁、筋交いなどの線材(軸)で空間を作り出すので、「線(軸)で支える」というわけです。

軸組工法の工事の流れ:基礎ができあがると一気に屋根まで組み上がります(作図:N研)

 

一方、2×4(ツーバイフォー)工法は、枠組壁工法とも呼ばれ、各階の層を積み上げてゆく感じです。まず基礎の上に1階の床をつくり、そこを作業ステージとして1階の壁(枠組壁)パネルを立ち上げます。その上に2階の床を作り、今度は2階の壁パネルを立ち上げて、最後に屋根ができます。(言葉ではわかりにくいでしょうから、これも下図でお示しします

この枠組壁の「」に規格サイズの木材(やや平らな柱みたいなもの)を使い、その断面のサイズが2インチ×4インチのものが良く使われたことから、2×4(ツーバイフォー)と呼ばれます。実際は2×6、2×10、4×4などいろいろあります。また、枠組壁のパネルは、工場製作して現場搬入・クレーン吊リ込みの場合と、現場で製作して、それを立ち上げる場合とがあります。

2×4(204と表します)の断面サイズ:204の乾燥材寸法は38㎜×89㎜です

この枠組壁面各階床面によって、それぞれの階に「」で囲まれた空間ができあがります。つまり、「面で支える」というわけです。

2×4(ツーバイフォー)工法の流れ:基礎がの上に床を作り、壁のパネルを立ち上げます、これを繰り返し、最後に屋根です。(作図:N研)

 

以上が一般的な説明ですが、しかし、最近では木造の軸組の場合もまず1階の床を作り、そこから柱・梁を組み上げることも多くなりました。柱の有無が両者の大きな違いとも言えますが、軸組の柱も最近では、2階分の長さの通し柱を使わないで、すべての柱を1階分の長さに揃えて、まず1階、そして2階床、次に2階という作り方をする例も増えました。

たとえば軸組工法でも、各階床を作業ステージとしてその階を立ち上げる方法も一般的になってきました。(左:1階床、右:2階床)

 

さらに、を使う軸組の場合でも、筋交い(すじかい:斜め材)を使わず、構造用合板などの面材耐震壁を構成しているところもあります。軸組と2×4(ツーバイフォー)を混成した独自工法をうたい文句にしている会社もあります。

つまり、軸組工法2×4(ツーバイフォー)工法という違いはあるものの、両者はどんどん近づいてきていると言えます。

なお、その他の比較項目として、施工技術者の習熟度の要否、断熱性能、気密性能、防火性能、リフォーム時の壁移動の容易さ、工期の長短、屋根を早く架けられる(雨の影響を受けにくい)・・・などなど。しかし、これらも両者の性格が近づいてきているので、現在ではどれも特筆すべき差異でもなくなってきています。

 

2.異なる土俵 ~ ふたつの木造工法の成り立ちの違いと、その後の進化

さて、2×4(ツーバイフォー)工法のセールスポイントである「地震に強い」点ですが、かつては阪神・淡路大震災(1995)後の調査で、2×4工法の住宅の被害が少なかったことから、そう言われました。その理由として、2×4工法は6面体のモノコック構造(一体構造)であるため、などと説明されます。

モノコックの住宅とは、骨組み(フレーム)を使わず、外皮(外壁)だけで強度を持たせた構造の住宅というような意味です。

それらは、根拠ある説明でしょうが、それを「現在の」軸組工法との比較で使われた場合は、ちょっと要注意です。両者の構造や工法がどんどん近づいてきているからです。

軸組工法の屋根裏見上げ

2×4工法の屋根裏見上げ

 

ちょっとだけお堅い話ですが、建築基準法という法律は昭和25(1950)年に作られました。その時点では、木造などの住宅については昔からの軸組工法を想定していました。2×4(ツーバイフォー)工法は北米から導入された工法であったこともあり、当初は「特殊な工法」として扱われ、特別な許認可(38条認定)が必要な工法とされました。

このように、ふたつの木造工法は、まずその生い立ちが異なるものでした。

その後、住宅を大量供給するという時代の要請から、2×4(ツーバイフォー)工法もその一翼を担うべく、70年代後半技術基準が整備され、一般的な木造工法として扱われることになりました。特殊な工法だったものを一般的な工法にするため、「枠組壁工法技術基準」は構造方式に厳格な制限が設けられました。そうした、最初から制限が厳しかったことで安全性が保たれていたとも言えます。

一方、設計の自由度が高いなどと言われる木造軸組工法は、建築基準法の変遷の中で、最初は比較的緩やかであったものが、いわば大地震のたびにその技術基準が強化されてきたという歴史があります。たとえば、1981年の新耐震基準、そして2000年基準(地盤、壁バランス、金物)などがありますが、その前後では耐震性能にかなりの違いがあります。

参考までに、N研ホームページの「中古木造戸建て住宅の耐震診断について」もご覧ください。

さらに、軸組工法の側で、2×4工法のメリットである1階のステージ(プラットフォーム)化を採用するなどの施工面での改良も試みられたりしました。何よりも、地震の力を受け止めるのに、筋交い(斜材)に頼っていたものが、軸組(柱・梁)に構造用合板を打ち付けるようになり、本来の軸組工法というより、セミ・モノコック構造に近いものになってきています。

2×4の現場で多用される釘の例(種類ごとに色分け)

実は、2×4(ツーバイフォー)工法が世に知られ始めたころ、「釘を大量に使う」工法であるなどとして、当時の在来工法からは批判的に見られていました。しかし、金物の使用面材(構造用合板など)の使用とともに、こちらもまた「大量の釘」を一定のルールのもとに使うものとなっているのは、ちょっと皮肉な話ですね。

N研-中尾-
いずれにしても、出発時点では別物であった両者が、次第に近づいてきていると言えますね。

 

3.では、両者を正しく比較するなら・・・

このように、生い立ちが異なりつつも、少しずつ近づいてきた両者ですが、未だに「設計の自由度」対「耐震性能の実績」といった、我田引水的セールストークも見られます。

しかし、たとえば耐震性能でその優劣を比較するのであれば、前世紀の大地震の被害事例を取り上げるような議論ではなく、同じ土俵で、同じ「ものさし」を使いましょう。

耐震性能の「ものさし」は、現在では耐震等級

建築基準法は、いわば最低基準。大地震時でも住む人の生命は守るというのが最低基準。被災後住宅の使用継続までを保証するものではありません。

耐震等級というのは、建築基準法とは別の品確法(住宅の品質確保の促進に関する法律)で登場した住宅性能表示制度で使われることばで、等級 1~3 までがあります。

  • 耐震等級1:建築基準法が求める耐震性のレベル。最低限必要な耐震性能です。
  • 耐震等級 2:「等級1で想定する地震力」の 1.25 倍の地震力にも耐えられるレベルです。
  • 耐震等級 3:「等級1で想定する地震力」の 1.5 倍の地震力にも耐えられる、最高等級です。

ちなみに長期優良住宅では耐震等級2以上を要求されます。長期優良住宅については、次をご覧ください。

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たとえば平成 28(2016)年の熊本地震では、震度 7 の地震に 2 度見舞われました。 

そのような想定外の大地震の後も避難所に行かないためには、できることなら耐震等級3がおすすめ。それもぎりぎりではなく、余力のある等級3がおすすめです。

コロナ禍を経験して、人が密集する避難所を避けたいというニーズが高まった今日、耐震等級に注目しましょう。

熊本地震|おすすめホームインスペクション|新築・中古・自宅の住宅診断

出典:内閣府防災情報参考資料(写真引用)

 

次に設計の自由度ですが、これは両工法の優劣というより、これまでお話ししてきたように耐震性能が上がるほど、平面計画は構造計画により制約を受けます

自由度が高いとされた木造軸組工法も、耐震性能を確保するためには、構造用面材を使用し、耐力壁や水平構面(床面)を適切に配置する必要があるので、凹凸ある平面や大きな吹抜、大開口などは制限されます。これは、組工法が「線による構成」から次第に「面による構成」に近づき、セミ・モノコック構造化しているからとも言えます。

 

4.木造の「軸組工法」対「2×4(ツーバイフォー)工法」・・・まとめにかえて

はじめに、この比較は、現在では意味が薄らいでいるとお話ししました。

①建築基準法制定当時、木造住宅については在来工法であった軸組工法が想定されていて、2×4(ツーバイフォー)工法は、北米由来の特殊な工法として扱われた

②その後2×4(ツーバイフォー)工法を一般的工法とするために、枠組壁工法技術基準が整備された。しかし、特殊な工法を一般的な工法にするため、4(ツーバイフォー)工法の基準には最初から厳格な制限が定められた

③一方、木造軸組工法は在来という性格もあり比較的緩やかな扱いだったが、大地震で甚大な被害が出るたびに、基準法が改定されて、次第に内容が強化された。その結果、金物の使用、構造用合板の使用など、「線で支える」工法に「面で支える」性格が加わった。その結果、プランの自由度は、以前に比べれば制約を受けるようになっている

④その結果、両者の耐震性能は近づいたが、その比較をするのであれば、共通の「ものさし」として耐震等級を用いるべきである。

⑤コロナ禍を経験した現在、大震災後避難所に行き密集するより、住み続けられる住まいでありたい。そのためには、耐震等級3、できれば余力を持った耐震等級3の住宅が望ましい

性格が近づいてきた両者:軸組(柱・梁)と面材(左)、枠組と面材(右)

 

ところで、今回の比較の話題からはそれてしまいますが、地震の話が出ましたので、関連する話題を少々。

大地震にも強い、とか震度○○に何度も耐えた、という類の宣伝をよく目にしますが、では、それほどの地震に耐えた後、そこに住み続ける上で支障はないの?と思ったこと、ありませんか。

具体的には、たとえば、固定金物に緩みや歪みが出ていないの?ということ以外に、建具(扉や窓)に支障はないの?とか、断熱・気密の性能は維持されているの?という観点。

気密性能に関しては、気密測定という実測を行う必要があるのですが、この数値(隙間相当面積C値と言います)を公開しているところはごく限られています。まして、大地震の後もその気密性能が維持できますと言い切るには、実測値の蓄積と、相当な技術力が必要です。多くは触れられたくないところでしょう。

しかし、工法のいかんに関係なく、今や住まいが大地震にも耐えられることは、時代の要請です。本当に大切なのは、その地震が去った後も、もとのように住み続けられるかということ。多少の補修は仕方ないとしても、躯体(骨組み)はもちろんのこと、断熱・気密といった住宅性能も維持できる、というのが理想ですね。現実的には、かなりハードルの高い話ですが、もし「震度○○に何度も耐えました」というようなセールストークをされたときには、この話題を持ち出して聞いてみてはいかがでしょうか。

 

N研-中尾-
今回は「軸組」対「2×4」という定番の優劣比較よりも、実は時代はもっと進んでいるので、もっと客観的な「ものさし」で考えましょう、というお話しでした。

 

 

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