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セカンドオピニオンとしてのインスペクション ~ 「第二の住宅診断」ご依頼をいただいて

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

今回は、中古マンションについての「2度目のインスペクション」というお話です

 

   ・・・前回のインスペクションは不調に終わり、本来はこのような報告書を頂戴できるものなのかと感動しておりました。(原文メール、太字強調はN研)

これは、既存(中古)マンションの診断報告書が届きましたという、お礼メールの一部です。

いや、でも「感動」とは大袈裟な、と思われるかも知れませんが、しかしこれは本当にいただいたメールそのままの引用です。

では、なぜここまで仰るかのというと、その理由は、「前回のインスペクションは不調に」というところにあります。

実は、私たちN研(中尾建築研究室)診断は、この依頼者様にとって「第2回目のインスペクション」だったのでした。

いわば、セカンドオピニオン(第二の意見)となるインスペクション・・・

N研-中尾-
今回は、そんな「2度目」のインスペクションのお話です。この依頼者様は、なぜ2度もインスペクションをされたのでしょう?そんなところから、このお話は始まります。

 

第二のインスペクション ~ セカンドオピニオンとしての住宅診断

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

対象は都市部の既存(中古)マンションですが、依頼者様にとって「第2回目のインスペクション」でした。

 

セカンドオピニオン」とは、より良い決断をするために、もう一人の人に求める「第二の意見」のことです。

特に医療の分野で使われることばで、ひとりの医師の診断や治療法だけで決めてしまわずに、別の医師の意見(第二の意見)も求めることです。

そしてここでは、住宅分野でのセカンドオピニオン、すなわち「第二のインスペクション」のお話です。

 

なぜ、セカンドオピニオン?

最初におことわりしておきますが、私たちは「第一のインスペクション」の診断内容については直接確認したものではなく、すべて依頼者様からのお話にもとづいています。

と言うのも、実は依頼者様からのメールに・・・

   ・・・調査報告書につきましても、(注:第一回目の)インスペクション会社から当方の元へは届いておりません。不動産仲介会社からも、何も提供されていない状況です。(原文メール、改行省略、カッコ内注記および太字化強調:N研)

つまり、「第一のインスペクション」では、診断報告書はもらえなかった、ということでした。

 

話はさかのぼりますが、はじめて私たちN研(中尾建築研究室)に、最初お問い合わせメールをいただいたのが、その「第一のインスペクション」から10日ほど後のことでした。

なので私たちは、当然その「第一のインスペクション」の報告書はすでに出ているだろうと思い、

・・・本件はすでに、他社がインスペクション(住宅診断)を実施済みとの由、その調査結果のレポートでは、信頼が置けないというご心配でしょうか?(N研から依頼者様あてのメール)

などと、不躾におたずねしてしまいましたが、それに対して上のようなお返事でした。

結局、最後まで「第一の・・・」からは、診断報告書は届かなかったそうです。

 

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

引渡し予定を延期してでも、住宅診断のセカンドオピニオンを・・・より良い決断のためには必要なことです。

 

何のためのインスペクション?

話を戻しますと、私たちがお問い合わせメールをいただいた時点で、売主(個人)との売買契約済み、手付金支払い済みで、お問い合わせをいただいた2週間ほど後に引渡し予定とのこと。

   ・・・インスペクションを行った旨をお伝えしましたが、当方(注:依頼者様)は実際には行われていないのと同じ状況であると思っています(原文メール、カッコ内注記および太字強調:N研)

 

静かな筆致ながら、ご不安とお怒りを秘めた、依頼者様のメールでした。続いて、

   ・・・当方(注:依頼者様)がインスペクション会社を選定し、インスペクションの実施を不動産仲介業の方経由で申し込みをし、インスペクターの方が来られました。しかし、当方不在の中、不動産仲介業の方とインスペクションをされてしまい、ほぼ説明や会話はなく終わりました(原文メール、カッコ内注記および太字強調:N研)

 

N研-中尾-
私たちも、これにはちょっと驚きました。一方からのお話だけで、他を悪く言うつもりはありませんが、さすがにこれは・・・

 

そして依頼者様から私たちN研(中尾建築研究室)にご依頼を頂いた後、引渡しは延期となりました。

   不動産仲介会社経由で確認を入れておりますが、売主様にも再度インスペクションを実施する点と、引き渡し日を1カ月延ばす点は了解を得られそうです。(原文メール)

 

依頼者様の不安と不信 ~ はじめての「インスペクション」

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

依頼者様との事前のやりとりの中で、ご不安とご不信の中身が徐々に明らかになってきました。(写真はイメージ)

 

引渡しが少し先に延びたことで、現地での診断に先立って、依頼者様と本件について事前の情報交換をすることがかなりできました。

この依頼者様も、ご自分で調べられる範囲はいろいろ調べておられる方でした。管理組合から関係資料なども入手されていて、開示可能なものは事前に送っていただき、助かりました。

 

事前のやり取りから見えた、依頼者様の不安や不信

さて、依頼者様との事前のやり取りを通じて分かったことがいろいろありました。依頼者様が、「第一のインスペクション」で不安や不信を感じられたことは・・・

・事前の約束では、診断当日は、マンション前に集合して、そこから説明を受けながら診断を行う、との話だった。しかし実際は、依頼者様が現地に到着する前に、不動産会社の人と「インスペクション会社の人」が診断を始めてしまい、ほぼ説明や会話はなく終わってしまったこと。

・その第一回のインスペクションは、仲介の不動産会社経由で申し込みをして、当日「インスペクター」の人が来たのだが、その人が、たとえば一級建築士のような資格保有者なのか、説明もなく分からずじまいだったこと。(自己紹介もなくインスペクションを行ったということ)なお、依頼者様が調べたところでは、その会社のホームページには「建築士が対応するとの記載」があるとのこと。

・説明もなく診断が行われたので、それが既存住宅状況調査」として行われたものか、「ホームインスペクション」として行われたものかも、結局のところ分からなかったこと。また、インスペクションの契約書」を交わすこともなく、診断が行われたこと。また、診断報告書も提出してもらえないこと。

・当日、部屋の壁クロスにひび割れ状のものが見られたので、依頼者様がその懸念を伝えたところ、不動産会社の人間が、「それはひび割れではなくシミか汚れであり、一般的な劣化事象です」などと言い、その「インスペクター」もそれに追随するような回答で、その箇所に近づいて確認することもしなかったこと。しかしながら、後日、このマンション全体でも、壁のコンクリートにクラックが生じている住戸があるということがわかった。依頼者様は、それに関する管理組合資料を入手して確認したこと。

などでした。

この他にも、ご心配な点をいろいろお話しいただきましたが、依頼者様にとって特にご不安・ご不満な点は、この最後のところでした。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

LDKにつながる和室という、この時期には良くある構成でした(写真はイメージ)

 

第一のインスペクション」の時点は、引渡し前であったこともあり、壁のクロスを剥がすことまではできなかったとのことですので、そのあたりの事情は汲むべきかとは思います。

しかし現地で、依頼者様が壁クロス表面の割れのような状態について懸念を訴えたのに、不動産会社の人から「ひび割れではなくシミか汚れでしょうね」と言われ、その「インスペクター」もその箇所に近づいて詳しく見ることもせずにそれに同調して、そこで終わってしまったとのことでした。

そして後日、以前から管理組合でこのマンションの他住戸の壁クラックが話題になっていたことが分かり、管理組合の議事録等を、その仲介の不動産会社経由で入手できたそうです。

この時は不動産会社もこのマンション全体での壁面クラックの問題は把握したことでしょうけれど、この住戸の戸境壁の件については、うやむやになってしまったとのことでした。

購入予定の中古マンションについての「第一のインスペクション」が、いわば曖昧な状態で終始し、診断報告書もないことから、依頼者様に不安感や不信感を募らせてしまったという状態でした。

 

診断実施に向けて

依頼者様のこうした不安事項をお聞きした上で、こちらかからも事前情報をお伝えしました。

たとえば、依頼者様が言われる「」についても、話をうかがっていると、どうも戸境壁についてのお話や、外壁面壁のお話などが入り混じっているように思われたので、簡単に次のような参考資料を作成して、依頼者様にメールしました。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

依頼者様との事前やり取りの「参考資料」(資料の一部を引用)、お答えは「Aの壁」でした。

そして、「この資料で、Aのような戸境壁のクロスならコンクリート壁のクラック(ひび割れ)の影響の可能性もやや大きいかもしれませんし、Bのような外壁側の壁のクロスなら、下地はボードであることが多いので、ボードの割れかも知れませんね」などとお話ししました。

N研-中尾-
こうした内容は、診断当日お聞きすれば良いこととも言えますが、住宅診断当日というのは、限られた時間でいろいろ拝見・確認する箇所がありますので、私たちは事前の確認になるべく時間を割くようにしています

そして、当日戸境壁のクロスを少しだけ剥がして良いか先方に確認していただくことにしました。その上で、クラックなのかどうかを判断しましよう、ということを申し上げました。

 

ここでも、意識の高い依頼者様

ご依頼の住戸はマンションの最上階にありました。マンションの最上階戸境壁にクラックが入りやすく、最近ではマンションの開発会社の一部では、その対応策として、該当壁の配筋を補強させています(たとえば、壁筋間隔を密にする、など)。

驚いたことに、依頼者様からのメールに、

   インターネットでも最上階は亀裂が入りやすいとの書込みや、コンクリートの膨張や収縮についての記載がありました・・・(原文メール)

と、いったことまで調べていらっしゃいました。さすが、ですね。そうした意識の高い方懸念事項を、「一般的な劣化事象です」などと一蹴してしまって良かったのでしょうか?

もちろん、インスペクションは非破壊の外観検査が基本なので、確定的に申し上げられないこともないわけではありません。その場合は、そのことをはっきりお伝えすべきでしょう。

この場合も、クラックかどうかを判断することはできると思いますが、その原因の特定(たとえば地震によるものが、屋上の熱による膨張によるものか、など)は、困難、あるいは推測の域を出ません。

この点については、事前に依頼者様にはっきりお伝えして、ご了解を得ました

N研-中尾-
よく、住宅のことは何でも分かります・・・みたいなことを言っているサイトもありますが、たとえ営業トークでも、大風呂敷をひろげすぎではないでしょうかね。

 

そしていよいよ、現地にて「第二のインスペクション」 ~  診断実施へ

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

診断をご依頼いただいた住戸は、そのマンションの最上階、角部屋でした(写真はイメージ)

 

最上階、角部屋へ

築17年、柱・梁を外部に出す「逆梁アウトフレーム」によって、彫りの深い、落ち着いた感じのマンションでした。

当日、お約束の時間前に、そのマンションのエントランスホールまで診断機材を運んでいると、依頼主様ご夫婦がお見えになりました。

それまでのメールでのやりとりで、依頼者様の礼儀正しく、しっかりした文章の雰囲気から、どちらかと言うとご年配の方かと思っていたのですが、まだ若いご夫婦でしたので、少し驚きました。

さて、清掃が行き届いているエントランスからエレベーター、最上階の廊下を通り、角部屋がお部屋でした。

この清掃が行き届いている」・・・に関しては、「マンションは管理を買え」のところなどもご参照ください。

最上階、角部屋ですから、眺望が良く落ち着きも感じられます。

住戸前廊下を他の方が通ることもほとんどなく、独立性が高い位置にあり、住戸の床下と、隣戸との戸境壁一面以外の外部はすべて直接外気に面しています。

マンションの場合、該当住戸の上階と下階、左右の隣戸に囲まれていると、断熱の効果はいちばん良いのですが、最上階、角部屋の場合はその点に関しては不利なわけです。

そこで、診断の前から、依頼者様からのお話もあり、この住戸の断熱結露のことは少し気になっていました。

 

当日のおもな観察内容

依頼者様とは、事前のお話しや資料を通じて、当日まずは次のような点は押えましょう、とお話してありました。

  • 断熱に関して問題点はないか
  • それに関連して結露の問題はないか
  • 壁の「クラック」についての確認(「ひび割れ」か「シミ、汚れ」か)
  • その他、依頼者様が気のついていない問題はないか

そして、次に示す図・写真が、これらに関する観察内容の一部です。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

当日のおもな観察内容

 

断熱、結露に関する問題点について

外部サッシは二重化工事済み、のはずだったが・・・

このマンションは、竣工時点では、外部のサッシ(窓)のガラスは単層(一枚ガラス)でした。それを、マンション全体の修繕の際に、全戸に内付けサッシ(インナーサッシ)を取り付けて、外部の窓を二重化していました。

依頼者様のメールには、

   売主様曰く、3年くらいまえに内窓をつけられて、その後からは断熱や結露予防にも効果を発揮しているようですが、この点は住んでみないと分からないので、住みながら様子を見ていこうと思います。(原文メール、太字化強調N研)

と、ありました。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

内窓を設置して、二重窓として窓の断熱性能を高めます(イメージ)

 

単層ガラスのサッシの断熱性能を高めるには、代表的な改修工法として「外窓改修(カバー工法)」と「内窓設置」があります。

  • 外窓改修(カバー工法):既存の窓枠だけを残して、複層ガラス(ペアガラス)のサッシを新しく取り付ける方法
  • 内窓設置:既存の単層ガラスのサッシはそのまま残して、室内側に内窓(樹脂サッシなど)を取り付けて、サッシを二重にする方法

といった改修方法があります。

本件では、このうち後者の方法で断熱改修を行ったわけです。

このように、外部サッシの二重化を終えていたマンションですが、実はサッシの開き方によって二重化できていない部屋がありました。

 

北側洋室の窓下壁クロスの劣化(写真②)

二重化したのは、外部の引き違いサッシのところで、その室内側に引き違い内窓を取り付けたところでした。

ところが、この住戸の角部屋の洋室は、外壁の二面に窓があるのですが、それぞれ内倒し窓片開き窓のため、いずれも内窓は取り付けられていませんでした。

(このふたつの窓は、引き違いサッシでなかったため、二重化工事の対象外とされてしまったのかも知れません。しかし、サッシ会社の内付窓の製品カタログなどを見ると、内付け内開き窓内付けはめ殺し窓などが載っていますから、改修工事のあった当時、このふたつについても内付けで二重化を検討すれば、室内の結露はもっと改善されたのではないでしょうか。)

さらに、以前お住まいの方が、部屋の入口扉下の隙間(アンダーカット)を塞いでしまっていた(写真④も同様)ため、換気不足となっていたようです。

建築基準法が改正され「24時間換気」が義務化されたのは、2003年。ちょうど本件の建築確認が下りたころでした。当時のこのマンションのパンフレットには『各居室に24時間換気システム』などと記載されています。部屋の扉の下を塞いでしまったのは換気のための空気の流れが気になったのでしょう。当時は、まだ一般に24時間換気の理解が希薄だったのかもしれません。

一枚ガラスのため断熱性能が低いふたつの窓と、この換気不足、冬場の加湿器の使用などによって結露が生じやすくなっていたものと思われます。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

(左)内倒し窓下付近、(中)窓横壁下、(右)開き窓下壁

 

後日の依頼者様からのメールです。

   内窓が無く結露とカビが酷い部屋については、リフォーム業者と相談し壁紙張替えや防かび剤を塗布し、プラスチックダンボールや除湿乾燥機なども用いて対処していこうと思います。やはり皆さまも同じ悩みなのか、DIYの世界ではありますが色々な対処法がありそうなので幾つか試してみる次第です。(原文メール、太字化強調N研)

 

和室出窓の天板の劣化(写真⑤)

次に、妻側(側面)にある和室には出窓が設けられているのですが、その出窓の天板ひどく劣化していました。

この荒れ具合から判断して、内窓を設ける前にすでに劣化が進行していたものと思われます。

出窓サッシのガラス面の結露水がサッシから溢れたことによるものでしょうが、そのほか、出窓下からの冷えによる影響も含まれるかもしれません。

内窓の効果を見るには、冬場などにサーモカメラで天板の表面温度を確認する方法があります。

リフォーム業者のサイトなどでは、こうした劣化した出窓天板の補修サービスを良く見かけますが、もし天板を外して補修する場合は、天板下の断熱材がしっかり充填されているかを確認して、場合によっては断熱部分まで補修したいところです。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

出窓天板の劣化:サッシのガラス表面の結露のほか、天板下の断熱材も要点検ですね

 

洋室コーナー付近壁の黒いカビ(写真⑨)

もうひとつの洋室は、戸境壁を挟んで隣戸のあるタイプの部屋ですが、外壁側コーナー付近黒ずんでいました。

一般的な構造のマンションはここに柱があるのですが、このマンションは柱がバルコニーの外側にある、「逆梁アウトフレーム構造」なので、図のように外壁と戸境壁がT字の形でつながります。

そして、断熱的には、外壁内側の断熱材(発泡ウレタン吹付け、など)が、戸境壁によって途切れます。この「断熱材の不連続部分」は、結露を引き起こす可能性があるので、今では戸境壁のところまで図の破線のような「折り返し断熱」(熱橋補強断熱)をすることが多いです。

しかしこのマンションでは、この折り返し断熱を行っていません。(販売時住戸平面図と現地観察からの推定)

もちろん詳しく結露計算を行って、熱橋による結露の恐れなしと判断した上での設計であれば良いのですが、どうでしょうか。

もし計算していたとしても、いろいろな条件設定で結果は変わりますので、安全側ということで、折り返し断熱(断熱ボードを打ち込む、など)を行っておくべきだったのではないでしょうか。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

洋室のコーナー部分のカビについて、原因を推定してみました

 

また、外壁側にコンセントがあり、それを外してその裏のコンセントボックス内を内視鏡で観察してみたのですが、内部に黒ずんだ部分が見られました。これは黒カビではないかと思います。

断熱・防露対策が必要な外壁面コンセントボックスを設置する場合、それによって断熱・防露の効果が損なわれないように注意した設計および施工が必要です。

たとえば、外壁コンクリート面断熱シート取り付けたうえで、樹脂製ボックスを固定するなどの方法があります。それでも断熱性能が低下しないとは言い切れないので、外壁部分へのボックス設置には慎重になるべきでしょう。

さらに、前出の角部屋の洋室と同様、入口扉下のアンダーカット部分が塞がれていました。

以上のような、断熱欠損換気不足とによって、該当箇所付近に結露が発生して、壁面のカビの原因となったと推定します。

後日の依頼主様からのメールに、

   報告書にもアドバイスありましたように、寒い日はおっくうになりがちですが、換気については、居室全体の空気の流れを考え換気を意識していくように致します。上手く換気が出来ない限り、内窓があっても相応の結露、並びにカビは進行していくと思い、健康を害さないよう留意してまいります。(原文メール、改行省略、太字化強調N研)

とありました。良く分かっていらっしゃいますね。

 

一般部の断熱状況について、確認したこと(写真①、③)

本件の一般部の断熱については、いくつかの箇所から間接的に確認しました。

洋室のエアコンスリーブのキャップが固定不足のため外れたので、そこから断熱材の切断面を確認しました。

また、ユニットバスの天井裏から、外壁側の断熱材の吹付け状況を確認しました。

この住戸は最上階なので、この上のコンクリート面に断熱材が見られないことから、このマンションの屋上外断熱であると判断しました。

依頼者様が不動産会社から聞いた話をメールしていただきました、

   屋上の断熱について、仲介業者曰く 「この時期のマンションは内断熱が多く、外断熱では無い可能性も高いです。・・・」とのことでした。(原文メール、太字化強調N研)

つまり、この仲介業者は、対象物件の浴室の点検口から天井内を確認することもしなかった、ということですね。

 

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

(左)エアコンスリーブのキャップ固定不足、(中)同、外壁内部断熱材状況、(右)浴室天井内から断熱材確認

 

「壁のクラック」について

依頼者様が不安に感じられたにもかかわらず、それを「一般的な経年劣化に過ぎません」のように答えて、曖昧に済ませたことから、不信感が芽生え、再度インスペクションを行うまでになった、いちばんのきっかけとなったのが、この壁面でした。

事前にご了解いただいておいたので、該当する壁のクロスをわずかに剥がしてみました。そして、その下の面を見ると、やはりクラックでした。

クロス表面もシミや汚れではなく、わずかに割れていました。

しかし、「これはクラック(ひび割れ)です」とだけ言えば、依頼者様はまた不安になってしまうでしょうから、幅と深さを測って、ご説明しました。

2箇所で測ってみたのですが、幅0.4~0.5ミリ程度、深さは10ミリに満たない程度だったので、このクラックが進行しなければ、とりあえず許容範囲内と言えます。

そして、簡易な鉄筋探査機で、壁のタテ、ヨコ方向について、鉄筋の反応を調べて、テープでマークしました。その写真に鉄筋の推定位置を書き込んで、おおよそこの位置に鉄筋があると推定できますとご説明しました。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

(左)問題の戸境壁、(中)簡易的な鉄筋探査、(右)鉄筋位置推定

 

もし、保管されている設計図書が拝見できるなら、「構造設計図」の中の壁配筋図のところで、この簡易測定の妥当性が確認できたことでしょう。

しかし、依頼者様からは、

   設計図書施工図については結局、仲介業者からも返答はないので、引き渡し後に管理組合に確認を入れてまいります。(原文メール、太字化強調N研)

とのお返事がありました。

N研-中尾-
ここでもまた、まだ管理組合の組合員になる前の、住戸購入予定者の段階では、全体に関わる設計図書、特に構造設計図などは開示してもらえない、ということでした。中古マンションのインスペクションではありがちな、限界のところと言えますね。

そして、このクラックについては、

   ・・・ひび割れ部分については、リフォーム業者を入れましてひび割れを塞ぎ、定期的にひび割れの度合いに変化が無いか確認していこうと思います。・・・管理組合と引き続き経過観察をしてまいります。(原文メール、改行省略、太字化強調N研)

とのお話しでした。

ところで、「マンションのコンクリートがひび割れている」というような表現は、おそらく一般の方にすれば、多くはとても不安に思われるのではないでしょうか。

それは、建築関係の人間が思う微細なクラックのイメージとは異なり、構造的欠陥のようなイメージに近いかも知れません。

そして、既存建物のクラックの原因特定そのものは、建築関係者でもなかなか難しいことですが、少なくとも、幅と深さの測定や、簡易的ではあっても鉄筋が間違いなく入っていることの確認などによって、現状を説明することで、不安感を和らげることはすべきでしょう。

そのくらいの簡単な計測道具は、インスペクターを名乗るのであれば、当然現地に持参するでしょうから。

しかし、どうしてあれが「シミや汚れ」に見えたのか、不思議でなりません。

 

その他の観察項目について

そして、観察できたその他の項目についても、いくつか取り上げてみましょう。

和室畳下のシミ(写真⑥)

六畳の和室の畳は、事前に「当日、手鉤(てかぎ)を使って畳をめくってみますから、先方様にご了解いただいておいてください」と申し上げてありました。

畳下に大きなシミ跡がありましたが、依頼主様ご夫婦はそれほど驚きもせず、「なるほど」という表情でした。

実は、前所有者からあらかじめ、ここで飼っていた動物が排尿してしまったことがありますと説明を受けていたそうで、このシミは納得されていらっしゃいました。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

六畳和室の畳下の状況、シミは動物の尿とのこと

 

シミは部屋の内部寄りについていて、窓側にはシミ等は見られませんでした。バルコニー側からの漏水跡などはありませんでした。

 

引き違いサッシ引手金具破損(写真⑧)

   ・・・部屋については、窓も5センチくらいしか開かず、何か詰まっているのか、ゆがんでいるのか未だ分からない状況です。(原文メール、太字化強調N研)

依頼主様がメールでこのように話されていた、窓(掃出し窓)が開けにくい件について、バルコニー側から該当の掃出し窓を見てみたのですが、次の左の写真のように、引手の金具の上のほうが、少しねじ曲げられたように変形していました。

かなり強い力でなければここまでにはならないでしょう。ねじ曲げられた金具が飛び出てしまって、窓の外にある網戸の枠をキズつけてしまっていました。

依頼者様が、窓が開けにくいと感じられたのは、室内から窓を開けようとした際、引手金具の飛び出し部分が網戸枠に引っかかってしまったためでしょう。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

引手金具の破損(左)と、網戸枠に付いたキズ(右)

 

   窓の取っ手や掃出しサッシ下部、室外機の吊り具などについても管理組合に確認し補修を行い、長く住めるよう対処してまいります。(原文メール、太字化強調N研)

 

セカンド・インスペクションを終えて ~ まとめにかえて

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

ここでは、「第二のインスペクション」について振り返ってみましょう

 

2度目のインスペクション

今回は、契約済み引渡し前の既存(中古)マンションについてインスペクションのやり直しでした。

最初のインスペクションについて、依頼者様のメールをもう一度引用します。

   ・・・当方(注:依頼者様)がインスペクション会社を選定し、インスペクションの実施動産仲介業の方経由で申し込みをし・・・(原文メール、カッコ内注記および太字強調:N研)

 

仲介の不動産会社経由で実施を頼んだ最初のインスペクション。その結果には納得できない依頼者様が、今度は独自に私たちの事務所にご依頼いただいた、という次第でした。

ここで、既存(中古)住宅のインスペクションの実施時期売買契約の時期の関係について少し見てみましょう。

次の図は、宅建業法の想定する「取引の流れ」の中における、インスペクション(ここでは既存住宅状況調査と言います)と、物件の売買契約の位置づけです。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

宅建業法が想定する「インスペクション実施時期」と「売買契約時期」(東京建築士会ホームページ掲載図にN研が朱書部分のみ加筆)

 

これによると、仲介(媒介)の不動産会社(宅建業者)は、媒介契約を結ぶ時に、依頼者に対してインスペクション(建物状況調査)を行う希望があるかどうかの意向を確認し、インスペクション業者を紹介できることになっています。

本件の依頼者様は、おそらくもっと後の、売買契約締結の頃に、第一回目のインスペクションを依頼したのではないでしょうか。ご本人には確認しませんでしたが。

というのは、もし図の時点でインスペクションを実施したのなら、売買契約前の「重要事項説明」の際に、宅建業者がインスペクションの結果買主(依頼者様)に説明する必要がありますから。

おそらく、依頼者様は、図の「売買契約」と「引渡し」の間でインスペクションを依頼され、結果、仲介業者からもインスペクション会社からも調査結果の報告も報告書ももらえなかったということでしょう。

 

依頼者様の不安や懸念を聴く姿勢が必要

以上は、あくまで本件の依頼者様経由でお聞きできた範囲での推測です。

あるいは、業者側にも言い分はあるのかも知れません。

既存(中古)住宅では「現状有姿」が原則で、クロスのカビや乱れはよくあることで、壁の多少のクラックもあり得る話で、売買契約段階になってそれを持ち出されても・・・などと考えたのかも知れません。

現状有姿とは:「現在あるがままの姿」という意味。「現状有姿取引」とは、現在のままの状態で取引するということで、中古住宅の取引では売買契約書に明記されることも多い。しかし、現状有姿取引を明記しただけでは、売手側の瑕疵担保責任(契約不適合責任)までも免除されるわけではないとされている。

しかし、たとえ売買契約の段階であっても、買手側がインスペクションを希望して、その際不安や懸念を示したのであれば、それに向き合う姿勢を見せることが必要でしょう。

少なくとも、仲介業者とは別に、「インスペクター」の立場でその場にいたのなら、なおさらでしょう。

   前回のインスペクション時のことや、全て経年劣化で何も問題はないと言い切っている不動産仲介業社に対する疑念から不安が高まり、・・・(原文問い合せメール、太字化強調:N研)

業者側からすれば、手間ひまのかかることかも知れませんが、そこを省略してしまうことが、不動産についてまったくの素人である買手には、かえって不安を誘発してしまうことになりかねません。

セカンドオピニオンとしてのホームインスペクション

中古なので「すべて経年劣化で問題なし」・・・その説明で不安を緩和できますか

 

インスペクションにできること

今回は、「第一の意見」(最初のインスペクションの結果)が報告書というかたちで表明されていなかったため、「セカンドオピニオン(第二の意見)」として、依頼者様が比較判断するというかたちにはなりませんでした。

   初回のインスペクションにおいては、全てを丸投げ何か異変があれば報告をしてもらおうと考えていた節があったと思います。(原文メール、太字化強調:N研)

2度目の診断後、依頼者様はこのように自省しておられますが、実際のところ多くの方がこうなのではないかと思います。

もし、第一回目でも診断報告書がきちんと提出され、それに対してセカンドオピニオンを申し上げることが求められたとしたら、私たちもさらに身構えただろうと思います。

しかし、その場合でも、私たちは「指摘できる事象(現象としての不具合)と、推定に過ぎない部分(原因の特定など)を明確に区別して報告すること」が大切であると考えます。

そして、不具合事象の原因特定などについて「分からない、またはいくつかの可能性が考えられる」と言える勇気も持つことも必要であると思います。

インスペクションにできること、そしてその範囲を超えてしまうこと、それらをお伝えすることも必要であると考えます。

N研-中尾-
「住宅に関する経験が豊富なので、何でも分かります」的な大風呂敷は広げるべきではないと、私たちは考えます。

 

依頼者様から

大切なことは依頼者様との「対話」であると思います。

今回の依頼者様とは、最初にお問い合わせメールをいただいてから、診断実施まで多少時間もあったことから、主にメールのやり取りでしたが、実に多くの情報交換をさせていただきました。

そのやり取りの「対話」を通じて、依頼者様の最初のご不安やご懸念はずいぶん軽減されたのはないかと思います。

診断報告書提出後いただいた「アンケート」の自由記入欄のご記載内容をそのまま引用します。

   診断実施前より、様々な相談に乗っていただき大変感謝しております。一般消費者には専門知識も乏しい人も多い為、中尾様のようなアドバイザーの方がいらっしゃる事は大変心強く思います。日々、体力を使われる仕事と思いますが、お体ご自愛いただき、末永くご活躍されることを祈念しております。ありがとうございました。(原文手書き、全文引用)

 

N研-中尾-
とても意識の高い依頼者様でした。お手伝いできたこと、貴重な経験ができたことを、私たちこそ、とてもありがたく思っております。

 

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N 研(中尾建築研究室)の住宅診断 ~ 代表が直接担当いたします

住宅診断にはN(中尾建築研究室)代表の中尾がお伺いします。業務の内容によっては、補助メンバーや、ご要望により英語通訳が同行する場合もありますが、 原則代表がメインでご対応いたします。

※検査・調査時に英語通訳者の同行をご希望の場合は、こちら

If you wish to have an English interpreter to be accompanied upon house inspections or surveys, please click here.

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