
今回は、壁や天井が最終仕上げ前の段階、つまり「ボード現わし」という状態での内覧会のお話しです
住宅が完成に近づくと、「内覧会のお知らせ」が届きます。
この「内覧会」とは、新築の一戸建てやマンションで、完成した住宅が引き渡される前に、購入者(あるいは建て主)が、契約者として、その最終状態を確認する場のことです。
ほとんどの方は、はじめてのことで、自分たちだけでは不安なので、内覧会同行サービスを頼もうかどうしようか、と迷われたりします・・・が、今回はその是非のようなお話しではありません。
まだ誰も住んだことのない新築の住宅は、当然ですが、すべてが真新しく、床・壁・天井の仕上げ、そして住宅設備類まですべて新品そのものです。
内覧会は、そうした真新しい成果物を確認するためのものですが、ごく稀に、最終仕上げの一部がなされていない状態で引渡しを受けたい、というお住まいもあります。
今回は、そうした住宅の内覧会のご依頼をいただいた、ごく稀な例のお話しです。
仕上げの一部が終わっていない状態の内覧会、そこでは、本来の仕上げの下地(したじ)の部分を見ることができます。
目次
最終仕上げ前での内覧会

その内覧会の「見えないところ」について~まずは「お問い合わせ」のメールから、です
N研(中尾建築研究室)への「お問い合わせ」から
・・・この物件は(中略)ビニールクロス施工無しでの引き渡しとなっております。そのため、住戸内全室石膏ボード施工までの状態での内覧会ご同行をお願いしたいと思います。(以下略) (原文メール、一部N研にて加除修正、太字化はN研)
これは、ある新築マンションの内覧会同行の「お問い合わせ」メールのごく一部です。
この依頼者様は、ある切実な理由で、マンション住戸の壁や天井の仕上げを、ビニールクロスとしたくない、ということで、マンションの売手側と交渉して、「ビニールクロスを施工しない状態での物件引渡し」とされました。
クロスを別の仕上げとしたい場合、売手側と「仕上げ材の変更」として、別の材料で工事をしてもらうケースも考えられますが、本件の場合は、詳しい事情は承知しませんが、最終仕上げは引渡し後に、依頼者様側で行われることになったそうです。
具体的には、当該住戸の「クロスなしへの変更」として契約を取り交わしたそうです。
その場合、通常ならクロスを施工後に取付けることとなるもの、たとえばスイッチやコンセント、天井の照明などの設備・機器類をはじめ、カーテンボックスや巾木、あるいは洗面化粧台やレンジフードといった、クロスと取合いのあるものすべてが、原仕様からの「変更箇所」として列挙され、これらを「石膏ボードの上に直接先付け、施工を行う」ことで、売手と買手(本件依頼者様)が合意されたとのことです。

ちょうど、新築住宅のコンセント・照明・レンジフード・吊り戸棚などが、写真いちばん右のような壁・天井のクロスなしで取付けられているような状態でしょうか(写真はイメージ)
そのため、現実的には、他の人たちからすれば、「最終仕上げ前」のように見えるような状態での引渡しになりました。そして、
・・・やはりプロの方に一緒に診て貰えることは心強いです。(以下略) (原文メール、太字化はN研)
と、書き添えていただき、本件内覧会同行のご依頼をいただくことになりました。
「ボード現わし」内覧会に向けて:主に「間仕切り」について、事前のやりとり
間仕切り壁のボードについて
私たちN研(中尾建築研究室)では、内覧会当日まで多少時間がある場合は、N研オリジナルの「診断計画(案)」を提出しています。
今回はその作成にあたって、現わし(むき出し)となるボードについて、依頼者様経由で内覧会主催者側にいくつか問い合せました。
依頼者様からの質問のかたちであったこともありますが、さすが大手の不動産会社、とても丁寧なお返事をいただくことができました。
まず、石膏ボードの固定について、下地は壁と天井ともすべて軽量鉄骨(LGS)とのことなので、それを固定するビスのピッチなどについて確認しました。
たとえば、壁面については、ボード周辺部200㎜以下、一般部300㎜以下で施工してあること。また、ボードはビス固定まで行い、継目処理は行わない状態(出隅部はコーナー部材にて処理)での引渡しとなること、などでした。
この中で、ひとつはっきりしたのは、この住戸で使用する石膏ボード(PB)の厚さと枚数でした。
この住宅に使う石膏ボードは9.5㎜1枚の施工となります(天井・壁共)。2枚貼りの施工箇所はありません。
との説明でした。
これについては、依頼者様はよく調べられていて、
・・・一般の分譲マンションは近年遮音性や耐火、防火性を高める為にPB12.5㎜仕様が増えているとネットに書かれていました。(中略)音漏れなどが気になります。(依頼者様からのメール、太字化はN研)
この点について、念のため質問してみたのですが、
PB9.5㎜またはPB12.5㎜かはプロジェクトによって決定しております。
との回答でした。ただし、依頼者が気にされていた、間仕切り壁の遮音については、平面図に図示した上で、
- トイレと洋室の境壁部分にグラスウール充填施工
- 浴室、洗面室、およびトイレの居室(収納部含む)に面する壁は、PB9.5㎜の一枚を床から天井上スラブ下まで施工
という対応をしています、との説明がありました。
その平面図について、何らかの支障があるといけないので、当方でかなり加工し、さらに略図としたものを、説明のために、次にお示しします。
(図中の番号は、後述の【図1】~【図5】内の番号に対応します)

間仕切り壁の遮音措置:この略平面図は説明のため作成したものですが、本件そのものではなく加工してあります(作図N研)
依頼者様が調べられていた通り、マンション住戸内の間仕切りに使うPBは、一般的に、不動産会社のマニュアル(規準書)でも、
『専有部の間仕切壁のPBは12.5㎜を標準とする』
としているところが多いのではないかと思います。
しかし、先日、私たちN研(中尾建築研究室)が内覧会同行依頼をいただいた、あるタワーマンションでは本件同様PB9.5㎜でした。(居室が直接、浴室、洗面室、トイレ、キッチンに接する場合は、PB9.5㎜にグラスウール充填)
マンション住戸の間仕切壁の仕様
分譲マンションの住戸では、隣戸との区画(戸境壁)は、一般にはコンクリート壁(タワーマンションでは乾式遮音壁)です。
一方、個々の住戸内の壁については、どの場所の間仕切り壁も同じものというわけではありません。
たとえば、水回り(トイレ、浴室、洗面、キッチン)が居室(寝室、リビング)の隣にあるような場合や、主寝室と居室が隣接するような箇所については、遮音にある程度配慮した壁とするのが一般的です。
これに対して、居室と廊下の間の壁などは、骨組みのLGS(軽量鉄骨)(または木軸)の両面に石膏ボード1枚というのがほとんどです。
おおよそは以上ですが、細かい使い分けは、マンション会社それぞれの技術基準(マニュアル)によって異なり、最終的には、上でも出てきたように、プロジェクトごとの商品企画によって決まるということでしょう。
間仕切り壁の「見えない」内側:室内の「壁」と言っても、内部はさまざま
では、いくつかパターンごとに、間仕切り壁の構成を見ておきましょう。
間仕切り壁の「見えない」内側:壁構成のいろいろ

マンション住戸内の廊下①、トイレ③、浴室④、洗面⑤などを囲っている「壁」~それぞれの間仕切り壁の内側は、実は同じではありません。それぞれの室と壁の向こうにある室(空間)との関係から、間仕切り内部の構成が変わります(各写真は本件のものではありません)
① 居室と廊下の間の壁

【図1】LGS両面PB張り:(左)構成図、(中)断面図、(右)天井裏のイメージ(いずれも作図・写真N研)
この場合の間仕切り壁は、図の構成が、おそらく各社ほぼ共通でしょう。(もちろん、もっと別の構成の事例もあるかもしれません)
先述したように、LGS(または木軸)の両面に石膏ボード(PB)1枚ずつの構成です。多くの場合両方のボードとも床面から天井面までで、コンクリ-トスラブまでは到達していません。
このボードの厚みが、標準12.5㎜でしょうけれど、本件のように「プロジェクトによって」は9.5㎜となるということでしょう。
もし、この箇所の間仕切りが、PB2枚張りずつの構成であったら、(間仕切りに関しては)ちょっとグレードの高いマンションと言えるかも知れません。
まず入口の扉(開き戸や引戸)の枠の見込み(奥行き)寸法を測ってみます。そして、浴室などの天井裏でLGSのスタッドの寸法(45×40など)を確認し、扉枠の壁と「ちり」寸法(10㎜の場合が多い)を測り、差し引きしてボードの総厚さが分かりますね。測定誤差があっても、だいたいのところは推測できるのではないでしょうか。

扉まわりと壁厚:枠の「見込み」寸法と「ちり」寸法を測って壁厚を求めます
② 居室・大(主寝室)と居室(洋室など)

【図2】居室どうしが隣接する場合の間仕切り壁構成は、いろいろな考え方がありそうです(図は例示、作図N研)
居室と居室が隣接する場合は、遮音に配慮が必要ですが、どうも各社いろいろな対応をしているようです。
壁のボードを二重にする場合や、GW(グラスウール)を充填する場合、あるいはその両方といった構成です。
多く見られるのは、少なくとも片方のボードは、天井面で止めないで、上部のコンクリ-トスラブまで到達させる、という点でしょう。
しかし、ボードについて、床下はどうする(床面で止めるか、床下のスラブまで到達させるか)とか、GWをどこまでとするかなど、各社いろいろな技術標準を持つようです。そして、そこに商品企画の判断で決まっているのでしょうね。
なお、居室(洋室)と居室(リビングなど)が隣接する場合でも、そこが出入口でつながっているような場合は、①としている会社が多いようです。

間仕切り壁の遮音措置:この図は、②「主寝室~居室」間の間仕切り壁の図示用に作成したものです(作図N研)
③ 居室とトイレの間の壁

【図3】トイレが居室(寝室)に隣接する場合は、GW充填とする場合が多いようです(作図・写真N研)
マンションの内覧会同行で思うのですが、トイレの天井に点検口が設けてある例は、意外と少ないように感じます。
浴室には必ず点検口はありますが、室内換気の給排気を第1種換気としたり、さらに全熱交換とするちょっと高級なマンションでは、廊下などの天井に点検口があります。
こうした天井点検口から天井裏を覗くと、壁の内側の構成を直接ないし間接的に観察できます。
トイレについては、遮音への配慮が重要なので、居室に接する場合は、GW(グラスウール)を充填するのが主流です。
写真は、トイレ天井に点検口があったマンションの例ですが、洋室に面する壁には、上階スラブ下までGWが充填されていました。
居室(洋室)側のボードは、上部のコンクリ-トスラブまで到達させているでしょう。
細かく言うと、会社によって、GWをトイレ天井までとするか、コンクリ-トスラブまで伸ばすかというような違いはあるようです。
④ 居室と浴室(ユニットバス)の間の壁

【図4】UBの周囲は、内側にボードを張らず、LGSの向こう側にのみボードを張ります。向こう側が居室の場合は、そのボードを上部のコンクリートスラブに到達させるのが一般的で、さらにGWを充填する例もあります(作図・写真N研)
浴室(ユニットバス=UB)は、ユニットを組み立ててからLGSを組むのが普通の工程でもあることから、UB側にボードは張らず、ここでは居室側にだけボードを張ります。
居室に接するUBでは、その一面のボードを二重にして、上部のコンクリ-トスラブまで到達させるケースが多く、さらにLGS内にGWを充填する例もあります。
写真は、右側のGW(黄色い壁の部分)の向こうが洋室、左側のオープンな部分は向こうが廊下です。このような、いわば割り切った考え方の壁構成区分は、よく見られます。
⑤ 廊下・洗面・トイレと浴室(ユニットバス)の間の壁

【図5】UBが廊下・洗面・トイレなど非居室部分に面する場合は、ボードは一枚となり、遮音への配慮は比較的簡易なものとなります(作図・写真N研)
先ほどの④でも少し触れましたが、浴室(ユニットバス=UB)の周囲の間仕切り壁は、LGSの片面のみにボードを張ることになり、UBが居室に接する場合は、二重張りやGWなどの配慮をするのが普通ですが、UBが廊下・洗面・トイレなどに接する場合は、簡易なかたちになります。
【図5】はいずれもUB天井裏の様子ですが、左の写真は、写真左側が廊下、右側がトイレに接していて、ボードを上部のコンクリ-トスラブまで到達させています。
一方、右の写真の例では、洗面室に面する壁は、そうした配慮はなく、ボードを洗面室の天井までで止めています。
⑥ 参考:乾式の遮音壁について
なお、間仕切り壁ではありませんが、【図5】の右の写真で、右側壁は隣戸壁(戸境壁)の乾式耐火遮音壁です。
中低層のマンションでは、隣戸壁はコンクリート壁とするのが普通ですが、タワーマンションなどでは、多くは、乾式の遮音壁としています。
これは、軽量化のためと、構造解析上の理由などによります。
ご参考までに、別の乾式耐火遮音壁の構成例もお示ししましょう。タワーマンションの例です。

住戸内の間仕切りとは異なり、隣戸との間の壁を乾式(コンクリートでない壁)とする場合、かなり重装備となります(写真N研、図は吉野石膏「A-2000WI」の図を参考として作成)
隣戸壁(戸境壁)は、耐火性能とともに遮音性能が本格的に必要なので、たとえばこの例では、両面のボードの厚みもかなりありますが、スタッド(垂直方向の軽量鉄骨)を千鳥(互い違い)に配してあります。この千鳥配置のスタッドは、1本おきに片方の住戸のボードだけを支えていて、片方のボードの振動がスタッドから直接隣戸側のボードには伝わりにくくなっていて、さらにスタッド間にGWが充填されています。
住戸間の壁は、かなり重装備というわけですね。
「ボード現わし」内覧会の当日

「ボード現わし」内覧会の当日となりました
当日の内覧会は、ほぼ普通通りに進行
中尾様のような専門家の方が一緒に内覧会へ行って点検を行って下さるととても心強いです。当日、どうぞよろしくお願いします。(原文メール、太字化はN研)
内覧会直前にいただいたメールです。「心強いです」と言っていただけると、とても励みになりますね。
当日、依頼者様とエントランスで待ち合わせて、ご挨拶、受付へ。
今回も、そこから先は、ほぼ一般的な内覧会の進め方どおりでした。
当日の担当者に案内されて、エレベーターから住戸の前に。そこでまず、MB(メーターボックス)を開けて、説明があり、いよいよ住戸内部へ。
真新しいタイル張りの玄関、上がり框、その先のフローリングと廊下の巾木・・・そこまではいつも通り。

タイル張りの玄関、上がり框、その先のフローリングと廊下の巾木
ただひとつ異なる雰囲気は、壁と天井が真新しいビニールクロスの表面ではなく、クリーム色のボード表面・・・であること。
事前に説明いただいていたので、違和感はほとんどありませんでしたが、床面はフローリングで仕上がっているのに、壁・天井はボードのままという、ちょっと不思議な室内。
その石膏ボードの表面に、コンセントや給気スリーブ、カーテンレールが取付いています。これらは、引き渡し後の別の仕上げ工事の際に、いったん取り外したり、養生したりすることになるのでしょう。

床と巾木までは仕上がっているのに、壁と天井が、クロス表面ではなく、クリーム色のボード表面という点が、普通の内覧会との違いです
壁面・天井面などの器具等の取付けのために、位置出しなどの鉛筆跡はありますが、ボード表面に落書きなどはないように管理しました(施工者側からの事前説明)
と、事前に説明されていたように、ボードの表面に見えたのは固定のためのビスだけでした。
一般の内覧会では、壁については、表面のクロスの状態、わずかな浮きやキズ、端部の状態などに目がゆくのですが、今回はそうした指摘は、当然ですが、ありません。

壁と天井:ボード表面には留め付けのビス
ここでは、ボード表面のビスのピッチ(間隔)などを確認することになりました。
石膏ボードのビスや釘による取付け間隔については、たとえば「壁」については、次の表のように、住宅などの木造の場合と、本件のようなマンション間仕切りなどの鋼製下地の場合とでは異なります。
特に、木造の場合は、軸組工法と枠組壁(ツーバイフォー)の場合では異なり、さらに、耐力壁の場合や省令準耐火構造の場合で異なります。木造の場合は、特に注意が必要です。

(左)石膏ボード工業会:石膏ボード施工マニュアルー木製下地・鋼製下地編―「石膏ボードの取り付け方法:壁」より、(右)鋼製下地壁のビスピッチ(N研作成)
浴室の天井裏からの観察
浴室の天井裏から、浴室周囲のボードの状況を観察しました。
浴室、洗面室、トイレの、居室(収納部含む)に面する壁は、PB9.5㎜の一枚を床から天井上スラブ下まで施工しています
と、あらかじめ説明を受けていたので、それも確認しました。
その通り浴室周囲は、スラブ下までボードが到達して、ボードに囲まれているので、本件では浴室天井裏のみの確認でした。
浴室は収納部を介して、居室(リビング)にも面しているのですが、先ほどの【図4】の写真のような例とは異なり、説明通りGWはありませんでした。また、ボード二重貼りでもないということでした。
ただし、洗面室に面する壁もスラブ下に到達させていました。
つまり【図5】の左図のタイプでした。そのため、【図5】右写真のように、洗面室側の天井裏が見えてしまうようなことはありません。

本件の浴室天井裏の状況:遮音のための石膏ボードの状況(作図・写真N研)
また、この住戸では、トイレには天井点検口がなかったため、トイレ~洋室間のGW充填状況を確認することはできませんでした。つまり、【図3】のような状況確認ですね。
浴室天井裏で観察できたのは、この浴室の上部は屋上(ルーフバルコニー)だったので、上部のスラブ(床板)下が断熱されていたことでした。さらに、隣戸側の断熱折返しについても確認できました。
依頼者様からのメッセージ
後日、本件の依頼者様から、私たちN研(中尾建築研究室)への「お客様アンケート」をいただきました。
そのメッセージ欄(自由記入欄)です。
中尾様 今回の内覧会のご同行、大変ありがとうございました。内覧会以前に於いても、詳細なインスペクション事項についてのレポートを頂き、内覧会当日に於いてもPbビス打ちのチェック、床の傾き、天井裏など、専門家の眼から調査して下さり、とても心強かったです。真摯にお仕事にとり組むお姿に心から感謝致します。(以下略)(N研「お客様アンケート」メッセージ欄から、原文手書き、太字化はN研)
過分なお褒めの言葉、お礼の言葉に、恐縮してしまいます。ここでもやはり「心強かった」というお言葉があり、私たちの励みになります。
ありがとうございました。
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