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それ、内覧会で言われても ・・・ 今さら是正できない「指摘」、ほか

それ、内覧会で言われても

今回は竣工時点の内覧会での指摘について、なかなか一筋縄では行かない点について扱います(イメージ写真:写真ACより)

 

最近の新築内覧会では、インスペクションの同行を利用することが、かなり一般的になってきました。

確かに内覧会当日は、売手側からの説明や手続きにかなり時間を取られ、また、売手側のペースで進行してしまいがちで、購入した我が家のできばえをじっくり観察・確認することだけに集中できるとは限らないことが、皆様ネットの情報などで分かってきたので、まんべんなく観察してくれるプロの同行を選ばれます。

しかし、内覧会でインスペクターが同行しても、決定的な不具合や重大な欠陥が出てくるようなことは、ごく僅かでしょう。それは皆様ご承知で、そうではなくて、「自分の側に立ってくれるプロが同行する」ことの安心感を求めて、依頼されます。たとえば、内覧会の後にいただいたメールでは、

・・・ 私どもでは、そこまで詳しくチェックすることは到底かなわず、一生に一度の購入を、安心して確認することができました。大変感謝しております。(以下略)(原文メール、太字化はN研)

のように、感謝いただいています。これらは、私たちN研(中尾建築研究室)にとって、たいへん励みになるお言葉でもあります。

ところが ・・・

私たちN研(中尾建築研究室)では、観察・指摘をする立場からは、内覧会という竣工段階の対象でも、できるだけ「見えないところ」も診るというスタンスで臨みますが、そこで見つけた事象が、指摘するには悩ましいというケースもあります。

N研-中尾-
今回は、そうした「悩ましい指摘」について、その実際と望ましい姿について具体的にご紹介してまいります。

 

内覧会での「悩ましい指摘」

今回は、その事例として、次のようなものをお見せします。

(1)内覧会の時点では「時すでに遅し」。まさに「それ、内覧会で言われても」というべき、悩ましい指摘。

(2)指摘の対象が、直接目に見えない「不具合の可能性」。間接的な検査結果からの、悩ましい指摘。

(3)もともと相矛盾する課題を抱えている箇所に対する指摘。そのジレンマを感じながらの、悩ましい指摘。

N研-中尾-
では早速、具体例に入りましょう。

 

(1)「点検口に配管」という無計画:そこは将来開けたら終わり?隙間の充填は?

 ~ 内覧会の時点では「時すでに遅し」。まさに「それ、内覧会で言われても」というべき、悩ましい指摘。

それ、内覧会で言われても

基礎断熱の点検口、そこに給排水管が通っている~基礎の計画段階の問題ですよね、でも内覧会で指摘する場合もあります(イメージ写真:写真ACより)

 

基礎断熱の点検口

これは、「床下進入診断」でよく見かける「無計画」の事例です。

浴室(ユニットバス=UB)床下を基礎断熱とした場合の、UB下への点検口の扱いです。

基礎断熱については、以前のコラム「床の断熱について、おさらいと観察」の中で取り扱っています。

このコラムで扱っているように、UB下を基礎断熱とする場合、断熱ボードが基礎に沿ってぐるりと貼られ(打ち込まれ)ます。

そのボードを切り取ったものを、はめ込んで点検口としている例が多いです。後で見るように、専用点検口が商品化されているのでそれを採用する例も増えてきていますが、まだまだこの「断熱ボード切り取り点検口」が主流のようです。

それ、内覧会で言われても

UB下基礎断熱の「断熱ボード切り取り点検口」の事例(ボード表面に印刷された商品名等は消してあります)(写真:N研)

 

UB下基礎を貫通する給排水管のルート

UB(ユニット・バス)は、その床下に給水管や給湯管、そして排水管があります。

これらの配管類がUB下から他の床下につながる場合、UB下まわりの基礎壁のどこかを貫通する必要がありますが、それをこの点検口の位置に通してしまっている例を時々見かけます。

たとえば、次の写真のような例です。この2例のうち、右のものは排水管まで貫通しています。

ちょっとイメージしてみてください・・・

将来、UB下を点検する場合、これらの点検ボードを取り外すことになりますが、その後の復旧はどうなるのでしょうか?

つまり、給排水管を断熱ボードの点検口に貫通させることは、メンテナンス性(点検と更新)を大きく損なうので、本来は避けるべきものです。

それ、内覧会で言われても

UB下の「断熱ボード点検口」を貫通する配管:給湯・給水管を点検ボードの隅に寄せた例(左)、排水管まで貫通している例(右)、(写真:N研)

 

こうした課題は残りますが、この2例では、配管貫通部が断熱材で充填されているので、こと内覧会の段階においては、現状を記録して、課題として報告することにとどめる場合が多いです。

そして、内覧会で確実に指摘の対象になるのは、次のような例です。

それ、内覧会で言われても

UB下「断熱点検口」を貫通する配管まわりが断熱充填処理されていない例:給湯・給水管が貫通したままの例(左)、排水管まで貫通したままの例(右)(ボード表面に印刷された商品名等は消してあります)、(写真:N研)

 

これらの例は、配管が貫通する箇所の断熱材を欠き取って、配管周囲をそのままにして内覧会を迎えています。これらは、断熱欠損に対する意識が欠けている、と言われても仕方ないでしょう。

それ、内覧会で言われても

配管貫通部拡大:断熱充填あり(右)、充填なし(左)、(写真:N研)

 

基礎貫通の配管ルートは点検口を避ける

UB下を基礎断熱とする場合、「給排水管は点検口の位置を避ける」、これがまずは原則でしょう。次にその例を示します。

それ、内覧会で言われても

UB下からの給排水管は点検口の位置を避ける:点検口を避けた基礎壁にスリーブを設ける(左)、あるいは、貫通部を備えた専用の点検口を利用する(右)、(写真:N研)

 

これらは、基礎工事の段階、つまり「基礎伏図」を作成する時点で、設備の先行配管をどの位置にするかを打ち合わせて、必要に応じて設備のスリーブを入れておくなどして、避けられた問題でしょう。

あるいは、配管貫通箇所の付いた専用点検口を使う方法もあるでしょう。

それ、内覧会で言われても

専用点検口の例:専用点検口は、将来UB下の点検が必要になった場合、作業が終われば、周囲のシールや断熱吹付けなどを行わずに復旧できるという利点もあります。(写真:N研)

 

専用の点検口では、UB下に進入して点検する必要が生じた場合、断熱ボードの場合のように点検口まわりのシールや吹付け断熱材を取り除く必要もなく、そのまま開けられ、作業が終われば閉めるだけという開閉の容易さも利点と言えるでしょう。

基礎断熱の範囲を広げ、基礎の点検口をなくす方法

ここまでは、UB下の基礎断熱の範囲を「浴室の真下とする」という前提でしたが、それを、「浴室+洗面脱衣室まで広げる」という方法もあります。

次の図は、UB下基礎断熱を浴室の真下だけとする事例です。

それ、内覧会で言われても

1階浴室の真下を断熱基礎とする例:洗面脱衣室の床下点検口から入り、基礎の点検口を開けてUB床下に入ります(作図:N研)

 

そして次の図は、浴室+洗面脱衣室の下全部を基礎断熱する方法の例です。

それ、内覧会で言われても

1階浴室と洗面脱衣室を合わせてその下を断熱基礎とする例:洗面脱衣室の床下点検口から直接UB床下に入ることができます(作図:N研)

 

この方法では、洗面脱衣室の床面に設ける床下点検口(多くは床下収納兼用)から点検できるので、基礎側面に点検口を設けなくて済みます。

この方法を基本としている住宅会社も時々見かけます。

床下点検口は、床下収納兼用でキッチンと洗面脱衣室の床にそれぞれ設ける場合も多いので、この方法も考えられますね。

UB床下の断熱基礎の点検口を開けることはまずない、という反論

「UB床下に入ることは稀なことなので、断熱ボード兼用の点検口を開ける機会はまずないのだろうから ・・・」、こうした反論が想定されますが、それは住宅寿命が短命だった頃の、旧来の考え方ではないでしょうか。

住宅が長寿命化に向かう今日では、そうした考え方は通用しなくなりつつあることに気付いていただきたいですね。

「お客様の声」から

最後に、「お客様の声」からです。このお宅では、床下進入調査の後、床下の写真をお見せしながら状況説明させていただきました。たいへん興味深そうにご覧になられていました。

そして、内覧会後にいただいたメールの一部です。

・・・今回は、見るべきポイントや考え方等とても勉強させていただきました。(中略)しっかり、そして楽しく内覧会を終える事ができました。(以下略)(原文メール、太字化はN研)

 

(2)「異音はリスク」:床タイルの打診結果 ~「貼り替え」する?貼り替えないで「経過観察」?

  ~ 指摘の対象が、直接目に見えない「不具合の可能性」。間接的な検査結果からの、悩ましい指摘。

それ、内覧会で言われても

音による間接的な検査 ~ 打音検査による床タイルの「異音」、その結果をどう受け取るべきでしょうか(イメージ写真:写真ACより)

 

次のお話は、内覧会での指摘で、是正しようとすればできるのに、対応が分かれるもの。

それは、直接見て確認できないために、是正する、しないに分かれてしまうもので、以前このコラムで取り上げました。

「異音あり」・・・ 悩ましい、玄関床タイルの「浮き」について

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タイルの打音検査とは、タイルの表面を「打診棒」で撫でることによって、音の違いを聞き取る検査で、内覧会同行サービスではおなじみのものです。

この時、他とは異なる「乾いた音」がする箇所があれば、「異音あり」と指摘します。

それ、内覧会で指摘されても

床タイルの「打音検査」:タイル表面を打診棒(左)で撫でて、乾いた音がしたらマーキング、(写真:N研)

 

この指摘に対して、施工側の対応は、①経過観察とする、②貼り替える、③持ち帰って後日連絡、の3つに分かれます。

この中で、①では、ある施工会社からは、「張り直しても完全な是正は難しい。もし割れが生じたら補修で対応する」という趣旨の回答があったそうです。

これは、施工会社の姿勢の問題でもあります。

そうかと言えば、対応に迷う現場担当に、「記録に残し、経過観察する。万一、割れが生じたら是正する」というような覚え書きを交わすという方法もありますね、という提案に対し、「社に相談したら、問題として残さず、貼り替えるよう指示がありました」と答えていただいた例もありました。この施工会社は、①とせず、②を選ぶというわけですね。

目に見える不具合ではない、という悩ましさ

「打音検査~異音あり」の問題は、音による間接的な観察のため、直接目に見える不具合とは事情が異なります。そのため、対応については、施工会社によって異なります。しかし、基本的には、

(1)荷重が集中する場所で、数枚のタイルがまとまって異音を生じるのであれば、本来は貼り替えなどの是正が望ましく、

(2)荷重があまりかからない壁際や下足入れ下などで、見た目も歩行感も異常が感じられなければ、記録に残し、引渡し時の保証書に記載して、経過観察とする、

といった対応が現実的でしょう。

ただし、「もし割れが生じたら補修で対応する」と口頭で回答して済ましたとしたら、企業姿勢が問われるでしょう。

こうした会社は、床タイルの施工に対して、指摘を受けた後も、それを営業所レベルなどでとどめて、それを品質管理部門にフィードバックしないのではないでしょうか。それでは改善は期待できませんね。

一方、ある会社では、内覧会に立ち会った監督から、「その打音検査しているところを写真撮らせてください。タイル屋に見せて、教育したいです」と言われたことがあります。

ちなみに、その現場は「異音なし」でした。

「音がするのは避けられないので」などと説明して済まそうとする会社とは違って、次への改善の一歩が期待できますね。

それ、内覧会で指摘されても

「今後割れが出たら対応します」として是正がなかった現場(左)、「問題を残さないよう貼り替えます」として対応があった現場(右)、(写真:N研)

 

壁のタイルとのリスク意識の違い~「割れ」と「剥落」

打音検査には、タイル裏の実態を推測するしかないという限界があります。

そして、「今後割れが出たら、貼り替えます」という対応には、割れたらその時対応すれば良いだろうという姿勢が感じられます。

しかし、これは床面だからという甘さとも言えるでしょう。

もしこれが壁面であれば、タイルの剥落の危険性につながり、その下を人が歩いていたら大きな事故となる可能性があります。壁面タイルの場合は、引張検査とともに打音検査は、剥落の危険性を予防するというリスク意識があります。

「割れ」を予防することと、「剥落」事故を防ぐという意識の差、と言えますね。

 

現実問題として

玄関まわりのタイル工事は、仕上げ段階の慌ただしい時期に行われることが多いです。玄関が工事の主要な動線にならざるを得ず、一時通行止めにしたり、やむを得ず足場板を仮に渡して、仕上げ面の上を通ってもらったりと、苦労しているのを見かけることもあります。

そうして苦労して仕上げたタイル工事ですが、それをどのように引き取っているのかという点が、現場管理側ではポイントとなるでしょう。

内覧会に同行されたある現場監督が、「実は事前に自分でも打音を確認して、貼り替えたのですが、まだ音が(異音が)出てしまいましたね。」と、残念そうに話していた現場もあります。このように、自分たちでも異音の確認をしている会社と、そうした確認などせず内覧会を迎える会社、同じ住宅の施工会社でも、現実にはこの差があります。

「見えない指摘」、打音という間接的な検査にたよる指摘は、そのいわば「悪さの程度」が推測の域を出ない悩ましい指摘です。

それ、内覧会で言われても

異音のない床イルのために:施工上の注意点いろいろ、そして何より施工後の打診チェック(写真:写真AC、作図:N研)

 

「お客様の声」から

最後に、「お客様の声」からです。内覧会当日に、玄関床タイルで異音があり、指摘に対して「③持ち帰って後日連絡」となったケースのお客様からです。

後日頂いた「お客様アンケート」の自由記入欄(N研へのメッセージ)からです。

・・・非常に細かい部分まで診ていただき、安心して内覧会を終えることができました。売主様や現場担当の方とも交流する余裕も持てました。(中略)玄関部の異音部については対応していただけることになりました。この度は本当にありがとうございました。(原文手書き、太字化はN研)

 

(3)「そこビス、ありません」: 相変わらず、バルコニー「防水」とサッシ「固定」のジレンマ

 ~もともと相矛盾する課題を抱えている箇所に対する指摘。そのジレンマを感じながらの、悩ましい指摘。

それ、内覧会で言われても

バルコニーの「掃出し窓」、そのサッシ下枠は、防水の立上がり部分に固定する必要がありますが・・・(イメージ写真:写真ACより)

 

そこはいつも、衝突の現場

木造住宅のバルコニー、特にその防水は、お客様にとって内覧会では、たいていは関心の対象外。

とりわけ、掃出し窓の下は、こちらからお話ししないかぎり、まずご覧にならないでしょう。

しかしそこは、インスペクションでも、あるいは瑕疵保険でも、重要なチェックポイント。

それ、内覧会で指摘されても

内覧会で皆様にはあまり興味のない掃出し窓の下(左)、しかしよく見るとサッシ枠の固定用ビス穴が見えています(右)(写真:N件)

 

そして、施工側との衝突が起きる場所でもあります。あるいは、防水側と建具(サッシ)側の衝突。

すなわち、バルコニー床はFRP防水であることが多いのですが、掃出し窓サッシ下の防水立上がりで、

「サッシ下の固定ビスがありません。」というコメントに対して、「防水層に穴を開けるなんて。防水屋がダメと言います。」と、お決まりの反論。

先日は、ごていねいに「○○の検査もこれで通ったんですよ。」と。(○○とは、ある保険法人名)

それはそうでしょう、防水会社も保険法人も防水の観点からここを見ているのですから。

「それなら、サッシ屋さんはビスなしでも大丈夫と言っていますか?」と、返したりします。

「いえ、でもウチはずっとこれでやってきていますから。」と、堂々巡りになります。「そんな危険なことは・・・」とも。

これを、「防水とサッシ固定のジレンマ」ということで、以前、このコラムに書いたことがあります。

そこ、ビスありません ~ バルコニー「防水」とサッシ「固定」のジレンマ

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防水のチェックポイント

防水の観点から(の検査)ならば、

・掃出し窓下防水立ち上がり高さ120㎜以上(一般部250㎜以上)

・防水先施工(サッシあと施工)を推奨

・床排水勾配の確認(1/50以上)

・ドレンまわり、オーバーフロー管の確認

その他のチェックとなるでしょう。(詳しくは、上のコラムをご覧ください)

それ、内覧会で指摘されても

木造住宅バルコニー防水チェックポイント(写真:写真AC、作図:N研)

 

一方、建具(サッシ)の観点からは

では、サッシ下枠の固定の観点からはどうでしょう。

サッシメーカーは、一般にサッシは四方固定を原則としているでしょうし、サッシによっては、「下枠固定ねじを打たないと下枠垂れ下がりにより開閉不良となるおそれがあります」とまで警告しています。

下枠を固定しない場合、風圧や開け閉め、地震などによってサッシが微妙に動くことも想定され、FRPのように硬い防水層の場合、時間の経過とともに、その動きの影響を受けないとも言えません。つまり、固定しないことが、必ずしも防水上有利ばかりとも言えないのではないでしょうか。

それ、内覧会で言われても

サッシ下固定ビス穴のいろいろ:ビスなし(左)、シールなし(中)、シールあり(右)、(写真:N研)

 

「衝突=ジレンマ」が起きるのは

もちろん、サッシを固定するために、防水層にビスを打つ場合、十分な注意が必要です。

上のような、衝突するふたつの観点を無視して、ビスを「打てと言われるのなら打ちますよ」のような、その場での「買い言葉」的反応をするのは危険です。

ビスやクギを打つことを考えていなかったサッシ下のところに、いきなりビスやクギを打ったらどうでしょう。

FRP防水は、ガラス繊維で補強した樹脂が硬化してできます。表面は硬いので、ビスなどをいきなり打てば、割れが生じる恐れもあるので危険です。

後述しますが、サッシのフィンと裏にくる防水層との間に、パッキング材やシーリング材が入っている必要があります。そして、いきなりビスなどを打ち込むのではなく、下穴を空けておきます。そうした、防水層の割れを防ぐ措置をした上で、ビスなどを打ちます。そして、そのビス頭にシールを施します。

本来は、「防水立上がり部分を貫通する位置にサッシ固定ビスを打つ納まりは避ける」べきで、それは関係者なら誰もが思うところです。

サッシの下枠が防水立上りの必要高さ(基準は120㎜以上)より、もっと上にあれば良いわけです。

しかし、掃出し窓のあるバルコニーでは、現実問題として、そのような窓まわりの設計は普通しないでしょう。

その結果、この衝突(ジレンマ)が生じるわけです。

ビスを打たずにサッシを固定する方法があれば、あるいは、ビスなしでも大丈夫なサッシの構造であれば、サッシの下側を覗いてビスが打たれていないと指摘する必要などありません。

それ、内覧会で言われても

「防水先施工、サッシあと施工」という施工順はほぼ定着してきているようですが、問題はそのサッシの取付けです(写真:N研)

 

両者の妥協点が「納まり例」

こうして、防水とサッシ固定という、矛盾する要求を踏まえた上で、保険法人や、住宅金融支援機構の解説などには、「納まり図」が示されていると解するべきでしょう。

住宅の施工者なら、この参考図「納まり図」は、どこかで目にしたことがあるでしょう。

なのに、現場で防水が終わったバルコニーに掃出し窓が取付けられると、「防水層に穴を開けるなんて」と恐れてしまうわけです。

「当社はこれまでビスなしでやってきましたから」と。これからも・・・

 

ちなみに、住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」や瑕疵保険法人各社の「設計施工基準」などの解説では、まず「防水先施工」が推奨されて、その場合のサッシ固定にあたって配慮したい点は、

・防水層とサッシのフィンの取合い部に、防水上有効なパッキング材やシーリング材を挿入する

・サッシ固定用のビスや釘のための下穴を開けておき、防水層のひび割れを防ぐ措置が望ましい

・サッシ固定後、ビス(釘)頭にシーリングを行う

その他の注意事項が書かれています。

このように、十分注意を払った上で、防水層にビスを打っていただきたいものです。

この根深いジレンマの落としどころ、というわけです。

それ、内覧会で言われても

防水先施工、そしてサッシあと付け:サッシ固定ビス(クギ)が防水層に及ぼす悪影響をできるだけ与えないよう、注意深く施工すること、それでもこれは「防水」と「サッシ固定」の妥協案なのです。(作図:N研)

 

「それ、ここで言われても」、ジレンマの決着

しかし、内覧会の場で「ここで言われても・・・」となる場合もあるでしょう。

「ビスは打ちません。これでお引き渡しします」と。

お客様の前で押し問答を続けるわけにも行きません。

ならば、「掃出し窓のサッシ下には本来ビスを打つべきだが、バルコニー防水を痛めないために、この住宅ではビスを省略しています。そのためにサッシ固定に関する不具合が生じた場合は対応します」旨の説明を、できれば覚え書きを、お客様にお出しするように、指摘シートではアドバイスします。

お客様の多くにとっては、あまり関心のないバルコニーの防水。

どこまで響くかは分かりませんが、万が一の場合のためのコメントです。

「お客様の声」から

では最後に、「お客様の声」からです。内覧会の前のメールのやりとりで、依頼者様からいただいた内容の一部です。

・・・(内覧会での)指摘は、その数よりもプロの方に見て頂いて、致命的な部位がないことが確認できればと思っています。直せないところも万が一ありましたら、教えて頂けるとありがたいです。前回、業界でも見解が分かれるものもありますとのお話しでしたが、そうしたものも合わせてお教え下さい。(以下略)(原文メール、カッコ部分、太字化はN研)

この中の「見解が分かれるもの」として、このビスの話をして差し上げた記憶があります。

 

終わりにかえて

それ、内覧会で言われても

では、今回のまとめです。(イメージ写真:写真ACより)

今回は、内覧会での「悩ましい指摘」の事例を取り上げました。冒頭の繰り返しになりますが、

(1)内覧会の時点では、「時すでに遅し」というべき内容。そのため、指摘シートにコメントしても、根本からの是正は困難で、次善の策として対応されるであろうもの:UB下基礎断熱点検口に配管貫通問題

(2)対象が直接目に見えず、間接的な検査の結果から「不具合の可能性」を指摘するもの。是正するか、経過観察とするか、対応が二分されるもの:床タイル打音検査による「異音あり」問題

(3)相矛盾する課題を抱えている箇所。そのジレンマを感じながら、いわば妥協点を探るもの:バルコニー防水において掃出し窓サッシ下枠の固定ビスが防水層を貫通する問題

これらは、指摘される側、指摘する側ともに悩ましい問題です。

施工管理によって解消されるものもありますが、着工初期、あるいは設計段階で解決しておくべきものもあります。

少々心配なのは、「ずっとこのやり方でやってきている。しかし、問題は聞いたことがない」という反応。

これは、本当に問題が皆無なのか、そうではなくて、住み手がずっと気が付いていないだけか、ということがあります。

今回の多くは、目に見えにくい、あるいは気が付きにくいものです。

私たちN研(中尾建築研究室)が言うところの「見えないところ」の悩ましい問題です。

N研-中尾-
今回は、まだまだ問題提起の域を出ていませんが、敢えてご紹介させていただきました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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