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降り注ぐあかり ~ 茶室の天窓(突上窓)、住まいの天窓(トップライト)

茶室の天窓、住まいの天窓

今回は「天窓」を扱います:左下は曼殊院八窓軒内部(作図:N研)、左上は曼殊院小書院から八窓軒方向(写真:N研)、上中写真:N研、右イメージ写真:写真ACより

 

京都の左京区にある曼殊院は、高い格式の門跡寺院で、洛北屈指の名刹です。

境内には、桂離宮にもつながる数寄屋風書院建築が見られます。大書院、その奥の小書院は、いずれも江戸初期の書院建築で、重要文化財です。

その小書院の奥に、隠れるように茶室八窓軒(重要文化財)があります。平三畳台目(客座の三畳と手前座の台目畳が横に並ぶ)の茶室です。

曼殊院八窓軒。この「八窓」とは、仏教の八相成道(釈迦の一生における八大事)を表現したものだそうですが、ここには、実際に八つの窓があります。その中には、虹のような影ができると言われる「虹の窓」もあります。

現在では、残念ながら非公開のようですが、かつては特別拝観できました。その頃一度だけ、この茶室に入ったことがあります

「虹の窓」のさらに上方、天井部分にも窓があります。突上窓、茶室の「天窓」です。

古い木造の茶室、その天井に「え、天窓!」・・・思わず、防水は?漏水は?などと考えてしまいますが、折角の貴重な拝観、そうした無粋な疑問はいったん脇に置いて・・・

N研-中尾-
今回の本題は「住宅の天窓」です。こちらは、防水、結露、断熱の問題が避けて通れませんね。では、さっそく・・・

 

天窓(トップライト)から注ぐ光 ~ 頭上からの明かりの効果

茶室の天窓、住まいの天窓

曼殊院、写真左は小書院と庭園、右は小書院の板縁から八窓軒の方向(下地窓と刀掛けが見える、現在の拝観はここまで)、写真:N研(2026.05撮影)

茶室の天窓「突上窓」からの柔らかい光

建築の中でも、とりわけ「茶室」建築は、極めて専門性の高い分野で恐れ多いので、茶室空間の話に踏み込むことはとてもできません。

しかし、茶室のように、古い時代からの建築なのに、天井(化粧屋根裏)を切り開けて天窓を設けているのはとても興味深いことです。何しろ、今日のような「ガラス」もない時代に、屋根面に開口を開けて、そこから自然光を取り込もうとしているのですから。

この天窓は「突上窓(つきあげまど)」と呼ばれます。部屋内側に障子、外部(屋根側)に覆戸が設けられています。その外側の覆戸を突上げて、突上竿(長短2種類)で支えます。

部屋内の障子は「油障子」と呼ばれる、油をひいた障子で、少しの雨などを防ぐようになっています。そして、この油障子は、上部に擦り上げられるようになっていて、障子を屋根裏の中に擦り上げ、先ほどの「覆戸」を突上げ、竿で支え外光を取り込むというわけです。長短2種類の長さの突上竿は、明るさに応じて使い分けるというわけです。(参考:茶道INDEX(verdure.tyanoyu.net))

では具体的に、曼殊院八窓軒茶室天窓突上窓)を見てみましょう。(一部推定箇所もあります)。

茶室の天窓、住まいの天窓

曼殊院八窓軒茶室の天窓(突上窓)、作図:N研

 

天窓の効果と意味

茶室の「突上窓」は「天窓」の一種ですが、まだガラスもない時代から続く、おそらく我が国独特の天窓でしょう。外側は開閉式で、内側に障子が設けられているので、「屋根面のガラス窓」という感じの今日的な「トップライト」とは隔たりを感じられるかも知れません。

この内側の障子油障子)は、外部の直達光を柔らかい拡散光に変える役割があるので、天井から直接的に降り注ぐ光というより、柔らかい明かりの面からのやさしい光となります。

最近の住宅のトップライトには開閉式のものや、遮光装置の付いたものなどがありますが、これらをこんな古くから先取りしていたことに驚かされますね。

天井照明などなかった古い時代、室内で頭上から届く自然の光は、特別な体験をもたらしたことでしょう。

ところで、この「頭上からの自然光」という、いわば空間演出上の効果に加えて、「天窓」全般には明るさの確保という役割があります。

よく、「天窓は壁の窓より3倍明るい」と言われます。しかし、その説明に「建築基準法で決められて」などとありますが、いきなり法律が出てくると一般の人にはちょっと興ざめかも知れません。

茶室の天窓、住まいの天窓

天窓と壁窓、その面積あたりの明るさの違い:トップライト(左)は壁の窓(右)の「3倍の採光効果」があります、写真ACより

実は、私たちを覆う「」というのは、どこも同じ明るさなのではありません。標準的な曇り空のモデルでは、真上(頭上)ほど明るく地平線に近いほど暗く見えることがわかっています。

ですから、私たちが日常目にする「壁の窓」からは、その空のうち比較的暗い部分を主に見ていることになります。一方、「天窓」はより頭上に近い、明るい方向の空を大きく見込むことができます。

この違いを、天空の明るさの分布モデルと幾何学的な見え方から数値化すると、同じ面積であれば、天窓壁の窓よりおよそ3倍の採光効果を持つと評価できる場合が多いとされています。

しかし「およそ3倍」という経験的な違いのままでは、必要な窓面積の算定には使いづらいので、建築基準法では、採光に有効な面積を計算するときに「天窓の面積は、壁の窓の3倍の採光効果があるものとしてよい」と定めています。

茶室の天窓、住まいの天窓

トップライトには建築の空間を演出する効果があるとともに、高い採光効果があります、写真ACより

 

住宅に採用される天窓(トップライト)~ 「3倍」採光で「採光無窓」を回避

このように、天窓(トップライト)には、「頭上から注ぐ自然光」という演出の効果と、「高い採光効果」とが期待できます。

私たちは、住宅の内覧会や診断のご依頼で、お住まいに伺いますが、そうした範囲内に限られますが、住宅において天窓を採用している例について、2階建てに限ってですが、経験的にごくごく簡単に分類してみると、

(1)隣家に囲まれたりして、1階の居室に採光が確保できないため、いわば「下屋」状の屋根に天窓を設けているケース

(2)上階の居室や吹抜け部に採光を取るために、最上階の屋根に天窓を設けるケース

があります。もちろんこれら以外にも様々なケースがあります。たとえば「光ダクト」を用いて2階屋根の天窓から採光して1階まで誘導する例などもあります。

(以下の事例は、比較的シンプルな形状のものから選びました。複雑なものは物件特定のおそれがあるので除外しました)

1階に「居室」を確保するために:「下屋」を設けてトップライトからの採光

敷地周囲をほとんど隣地に囲まれた、いわゆる旗竿地(路地状敷地)などでは、そのまま敷地いっぱいに建てると、1階の窓はあまり採光を期待できず、法的にも「採光無窓」状態になってしまいますね。

たとえば、平面的に建物の一部を欠き込んで小さな中庭を設け、そこに窓を設けて採光するという方法もあります。光の井戸(ライトウエル)ですね。

しかし、旗竿の狭小敷地となると、欠き込むのは2階だけとしたいというケースも多いでしょう。

こうした場合、良く見かけるのが、1階の一部を下屋としてそこにトップライトを設ける方法です。図のA邸B邸がこの例です。これらは、新築の内覧会同行のご依頼があったお宅です(プライバシーのため趣旨を変えない程度に加工してあります)。

茶室の天窓、住まいの天窓

敷地周囲のほとんどを隣地に囲まれ、1階の下屋にトップライトを設けた2例、作図:N研

 

両者は似ていますが、階の構成、特にLDKのある階になっています。次の略平面のように、

A:玄関以外はほとんど隣地に囲まれた平面ですが、1階にLDKと水回り(洗面、浴室、トイレ)、2階に個室(洋室)、屋上をルーフバルコニー

B:こちらもほとんど隣地に囲まれていますが、2階をLDKと個室(洋室)1室、1階は中央に水回り(洗面、浴室、トイレ)があり、それらを挟んで個室(洋室、SR)が3室

茶室の天窓、住まいの天窓

2邸の平面構成:両者はLDKが1階か2階かという違い、作図:N研

 

Aは、1階のLDKを「居室」とする必要がある(法的にも)ので、キッチン前のダイニング部分の天井に、やや大きめのトップライトを設けています。

Bは1階に3室の個室がありますが、図面表示上は、そのうち2室がSR(サービスルーム)で、1室を洋室居室)とするためトップライトを設けています。

茶室の天窓、住まいの天窓

(左)キッチン前ダイニング上から注ぐあかり(イメージ、写真AC)、(右)1階の3室すべてがSR(納戸)では良く無いのでトップライトを設けて居室化(写真N研)

 

住宅の「居室」と採光規定:「居室」とは、「居住、執務、作業、集会、娯楽などの目的のために継続的に使用する室」を言い、住宅ではLDK、寝室、子供室などが含まれます。そして、住宅などの居室には、原則として採光上有効な窓などの開口部を設けることが求められています。この「採光上有効な窓の面積」というのは、単純な窓面積ではなく、敷地境界までの距離や建物高さによって決まる係数( 採光補正係数)を窓面積に掛けて算出します。そのため、旗竿地に計画する住宅などで、敷地境界ぎりぎりに建てる必要がある場合、壁面に窓を取っても採光上有効な面積が確保しにくくなるという問題があります。

採光無窓となる個室SRとか納戸として表示するのは、都市部の狭小住宅などではよくありますが、さすがに1階の3室すべてをSRとはできないということでしょう。

天窓(トップライト)は、頭上からの自然光によって室内空間を明るく演出してくれます。A邸では、玄関ホールからLDKに踏み入れた時、向こうに見えるダイニングの壁面が明るく照らされていて、良い雰囲気でした。

そうした空間効果がありますが、A邸B邸とも「無窓居室となるのを回避する」ために天窓を採用したという切実な理由がありました。

2階個室のトップライト:天窓による採光効果

2階(最上階)のひと部屋に天窓を設けた例は、よく見かけます。都市部の住宅地だけでなく、やや郊外の整然と開発された住宅地の住宅でも、見上げるとトップライトがついている洋室があります。

次の図にはこうした例を取り上げました。

Cは都市部の住宅で、高さ制限の制約で斜め天井となった洋室の天井に天窓がついています。

よく屋根裏部屋ロフトの天井に天窓を設けている例がありますが、高さ不足による窮屈さを緩和する意味合いもあるのかも知れません。

茶室の天窓、住まいの天窓

屋根裏部屋の天窓(イメージ、写真AC)

 

Dは郊外の分譲住宅で、比較的ゆとりのある敷地ですが、2階の洋室にトップライトを設けています。

茶室の天窓、住まいの天窓

2階の洋室にトップライトを設けた例、作図:N研

 

ところで、このC邸では、天窓の下に横長窓が設けられていました。

N研-中尾-
専門の方たちからは「まったく牽強付会」とでも言われそうですが、敢えて・・・

牽強付会(けんきょうふかい):道理に合わないことを、自分の都合のいいように無理にこじつけること。

この住宅の小居室に設けた「天窓+横長窓」の組み合わせは、ちょうど「突上窓+連子窓」によって、狭小な空間を柔らかな明かりで満たした、あの茶室に通ずるものがあるのではないか、と。

茶室の天窓、住まいの天窓

天窓のある茶室(左)と住宅(右)作図:N研

 

天窓を持つ茶室と住宅、このふたつを並べるなど笑止、論外・・・きっとそう言われるでしょうね。

そもそもインテリアがまるで違いますからね。

でも、個室の天窓を見上げた時、ふとあの茶室の突上窓を思い出したものですから。

 

天窓の構成と、住宅の天窓(トップライト)採用にあたっての注意点

さて、ここからは技術編です。

茶室の突上窓の構成

まず茶室の天窓について。

茶室の天窓、住まいの天窓

突上窓の構成:(左)八窓軒の天窓にN研加筆、(右上)桂離宮松琴亭茶室突上窓断面詳細図(東京都立中央図書館)よりN研模写の上加筆、(右下)如庵平面の一部にN研加筆

 

八窓軒や、後ほどご紹介する如庵(じょあん)など、窓を多く配している茶室では、そうしたいくつもの窓を自由に配してその面白さを追求しているように思えます。

ところが、そうした自由な窓も、たとえば突上窓では、その配置や寸法に一定の約束事があるようです。

突上窓は、化粧屋根裏(斜め天井)を、垂木を中心にして、垂木間ひとこま分の寸法で切り開くのだそうです。

そこに木枠を組み込み、上方に擦り上げることのできる障子(油障子)を入れ、その上部の外部に覆戸が取り付く、という構成上のルールがあります。

長い年月の中で、このように定式化されたのかも知れませんね。

 

住宅の既成天窓と造作天窓

では、現代に戻って、住まいの天窓(トップライト)について。

木造住宅向けの天窓(トップライト)は、今日では既製品のトップライトが主流です。

既製のトップライトに対して、製作もののトップライト造作天窓という選択肢もありえますが、その場合、防水性能断熱・結露をはじめ性能保証のハードルがとても高くなります。

たとえば住宅瑕疵保険などでは、既製品のトップライを使うことを推奨していて、既製品を用いないトップライト(造作天窓)を設ける場合は、個別に防水性能の確認が求められます。

もちろん、既成品にはないようなデザインや形状のトップライトを強く要望される場合は、造作トップライトになりますが、その場合は、雨漏りリスク対策断熱・結露対策将来のメンテナンス性などに十分配慮したものとする必要があります。

このように、造作トップライトの採用には特に慎重になりましょう。将来にわたっての雨仕舞い結露のリスクを考えるならば、天窓については既成トップライトを前提とする方向が望ましいと言えます。

茶室の天窓、住まいの天窓

戸建て住宅に設けるトップライトの多くはメーカーによる既成品です、写真:N研

 

トップライトの設置場所について

このように保守的(安全側)に、既成品を優先して採用することとして、そのトップライトを設置する場所の注意点について。

先ほど、「1階に『居室』を確保するために:『下屋』を設けてトップライト」のところで、1階にあえて下屋を設けて、そこにトップライトを設置した事例を紹介しました。

このトップライトを設置する下屋屋根部分は、2階部分を広くしたいため、どうしても狭くなりがちです。

しかし、ここで注意したいのは、トップライト(天窓)を設置する屋根面については、トップライトまわりの空きを確保する必要がある、ということです。

後で述べますが、トップライトは本体とそのまわりの屋根の防水層がつながって、ひとつながりで雨漏りを防ぎます。トップライト本体は金属で、防水層はルーフィングという屋根用防水シートです。

まず屋根全体にルーフィングが張られ、トップライトの部分は、その四辺にルーフィングを立ち上げて、防水を接続させます。

トップライト本体の枠を固定した後、その枠の四周に専用の水切り」を取付け、屋根材(化粧スレートなど)が葺かれます。

N研-中尾-
(言葉で言われてもイメージしにくいかもしれませんが)要するに、既成のトップライトは主に、本体四周の防水層とそれを押える水切り取合いをしっかり行っておくことが重要なので、そのためトップライトまわり空きを確保すること、つまり下屋などの屋根の広さを、ある程度確保することが望ましいということです。

あるメーカーでは、本体周囲に60㎝以上の空きを取るよう推奨しています。

 

トップライトの取付け

住宅用の既成トップライトは、トップライト専業メーカー住宅建材系のメーカーなどが扱っていて、防水性の高い製品を提供しています。

そうした防水性能を十分に発揮させるためには、施工側がメーカーの指示を守る必要があります。メーカー標準ディテールから外れないこと、そして施工マニュアル記載の取付け手順や注意事項を遵守することです。マニュアルに従わず施工して雨漏りすると、メーカーの製品保証の対象外となることがあります。

実際、トップライトの雨漏り発生原因では、マニュアルの指示に従っていなかったことが多くを占めています。

日経PB:図解 木造住宅トラブルワースト20+3 2024.04、日本住宅保証検査機構のデータによる

屋根仕上げには、化粧スレート、鋼板、瓦などがありますが、トップライトメーカーは、それぞれに対応した独自の納まり(ディテール)を持っています。また、屋根仕上げ材に対応した専用水切りが用意されているので、現場合わせを避け、必ず専用部材を使うようにしましょう。

茶室の天窓、住まいの天窓

既成品トップライトの例と防水注意事項、(上)日本ベルックスHPの資料などを参考にN研作図、(下)写真:N研、作図N研

 

トップライトの施工では、取付けの手順が重要です。

まず、野地板の開口部分にトップライト本体を固定し、そのまわりに防水層(ルーフィング)が施工されます。

そして、防水層を本体枠側面まで立上げますが、この時枠の隅部(コーナー部)をしっかり塞ぐことがポイントです。いわゆる防水紙の三面交点ピンホールが生じやすい箇所です。

日経PB:雨漏りトラブル完全解決 2017

この点は、住宅瑕疵保険の解説書でも注意しています。

ルーフィングを張り上げてから専用水切を上に重ねて固定しますが、この時、専用の防水テープを使います。

専用水切りは、トップライト枠の下→側面→上の順に取付けて行きますが、形状についてはメーカーごとに特徴があるので、取付け方法の詳細は必ずマニュアルに従うことが大切です。

以上のように、トップライトの取付けには手順があるので、その遵守が必要です。

トップライトで雨水が進入した事例では、ルーフィングの張り上げ不足ルーフィングのコーナー部への塞ぎ忘れコーナー部などに設置する水切りの加工不良などが原因としてあげられています。

 

シーリングに過度な依存をしない

シールのみで防水しようとすると、経年劣化とともに漏水する危険性があります。

たとえば、トップライトのガラスと枠の取り合いをシーリングのみに依存する場合、そのシールが破断すると、そのまま雨水が室内に浸入する恐れがあります。

N研-中尾-
シールの経年劣化による雨水の進入」は保険金の支払い対象となりませんと明言する保険会社もあります。

トップライトをはじめ、もしどうしてもシールのみで防水を行う箇所が生じる場合は、定期的なメンテナンスが特に欠かせないことを理解しておく必要があります。

私見ですが、造作トップライトでは、シール依存度が高くなる傾向があると思いますので、要注意です。

 

トップライトの結露

トップライトまわりの結露は、発生可能場所を分けると、①ガラス面、②枠・開口内法(うちのり)、③周囲の壁・部屋内部、となります。

いずれも室内の空気の温度と湿度に関係するので、共通して、室内の適切な換気空気の流れ湿度コントロールが大切です。

ガラス面の結露は、室内の湿った空気が冷えたガラス面に触れて発生します。

 既成のトップライトでは、複層ガラスLow-E複層ガラスで熱貫流率(熱の伝わりやすさ)を下げて、表面温度が下がらないようにしています。

開口部周囲の枠・開口内法の結露は、ガラスより熱貫流率が高い(熱が伝わりやすい)材(枠、金物など)によって、熱橋部分(局 所的に熱が伝わってしまう箇所)で発生したり、開口まわりの断熱欠損部で発生したりします。枠まわりや開口部でカビが発生したり、仕上げ面が劣化したりします。

 これには、トップライト取り付け部の断熱材の連続に注意し、断熱材の室内側の気密・防湿層枠まわりまで連続させます。

 また、この部分で冷気が滞留しないような空気の流れをつくることも大切です。

開口周囲の壁部分の結露は、室内側仕上げ面の表面結露と、壁内部や小屋裏(屋根裏)内部の内部結露の問題があります。

 室内の湿度を抑えるための換気を行うことが重要ですが、同時に、壁内部や天井裏の断熱材防湿層を確実に施工することが大切です。

 特に、次で取り上げますが、吹き抜け部(導光部)を囲う壁の断熱を忘れないようにしなければなりません。

 

トップライトまわりの断熱

トップライトが取り付く天井の形状には大きくふたつのパターンがあります。

次の図のように、斜め天井平らな天ですが、このふたつは「小屋裏(屋根裏)があるか、ないか」の違いです。

その違いは、屋根断熱(小屋裏のない斜め天井の場合)か天井断熱(小屋裏のある平らな天井の場合)かの違いでもあります。

N研-中尾-
屋根断熱天井断熱の説明は、こちらをご覧ください。
茶室の天窓、住まいの天窓

トップライトが取り付く天井は「斜め」か「平ら」、その裏側の断熱の仕方によって、屋根断熱(左)と天井断熱(右)に分かれます(作図:N研)

 

このふたつの違いですが、上の略図では「断熱材」とさらっと書いてありますが、実際は断熱材にも種類があり、形状もさまざまで、たとえば、板状のフェノールフォーム、吹付のウレタン、マット状のグラスウールなどがあります。

天井の断熱材については、こちらをご覧ください。

断熱材は竣工内覧会の時点では、天井や壁の内側に隠れて見えませんが、工事途中の姿はたとえば次のような感じです。

茶室の天窓、住まいの天窓

屋根断熱と天井断熱の施工、写真・作図:N研

 

実は、斜め天井(屋根断熱)の断熱材のさらに外側には、屋根下地板(野地板)との間に「通気層」を設けてあります。

平ら天井(天井断熱)では、小屋裏(屋根裏)がありここを自然換気しています。

先ほど「結露」のところで、内部結露と言いましたが、それを避けるために、こうした通気、換気によって湿気を逃がしています。

一方、断熱材の壁ボード側(室内側)には、写真にもありますが、防湿シートを設けて、室内の湿気が壁内部に入らないようにします。

ここで特に注意したいのは、天井断熱の場合に生じる、いわばラッパ状導光筒の部分(ここは定まった呼び名がないようです)です。

あるお宅で、天井点検口から、この部分(導光筒の天井裏側)の断熱状況を拝見したことがあります。

筒状の形なので、筒のまわりを断熱材が包んでいます。

天井部分の断熱材がこの立上りの断熱材につながり、それがトップライト本体に連続して、ひとつながりの断熱の層を形成します。

茶室の天窓、住まいの天窓

天井断熱の場合に生じるトップライト導光筒の天井内の断熱材の一例、写真・作図:N研

 

ここで注意が必要なのは、室内側の防湿シートです。天井面の断熱材から導光部の立上り、そしてトップライト枠まで防湿シート連続させます。

 

トップライトのメンテナンス

トップライトは屋根材同様、風雨日射などの過酷な環境に絶えず晒されています。しかも、今まで見てきたように、防水層につながり、水切りで固定され、多くはシーリングもされています。

本体のガラス面アルミ枠材水切り金物固定用のビスシール材など、一体として防水性能を保っていますが、これらは時間の経過ともに劣化してゆきます。

トップライトだけに限りませんが、経年劣化は避けられないので、定期的な維持管理が必要です。

ガラスの熱割れや、枠下付近のカビ・黒ずみの確認などは、使用者にも注意いただくよう伝えておきたいところです。

既成のトップライトであれば、漏水保証を確認し、点検サービスがあれば契約しておきたいところで、さらに長期的には更新・交換も検討する必要があります。

 

茶室の天窓、住まいの天窓

経年劣化した屋根とトップライト:年間を通して強雨や暴風に晒される屋根とトップライトはメンテナンスを忘れずに(イメージ、写真AC)

 

ふたたび、茶室の天窓、住まいの天窓

本稿の最後に、再び茶室の天窓について少しお話しします。

天窓を持つ茶室(有名茶室三例)

茶室の天井に、採光と換気のために突上窓が取入れられたのは古く、中世末から安土桃山くらいまで遡るのではないかとのことですが、現在まで残っている代表的な茶室は江戸前期くらいのものが多いようです。

調べてみると、「天窓を持つ茶室」は意外と多くあります。その中で、冒頭の八窓軒をはじめとする超有名な突上窓を持つ茶室三例を取り上げて、比較しつつご紹介します。

● 曼殊院・八窓軒(京都市左京区、重要文化財)

● 桂離宮・松琴亭茶室(京都市西京区、別名:八ツ窓囲(やつまどがこい))

● 如庵(現、愛知県犬山市、国宝)

茶室の天窓、住まいの天窓

(左)曼殊院・八窓軒、(中)・桂離宮・松琴亭茶室、(右)如庵:天窓(突上窓)の位置は同じではありません

 

八窓軒は、曼殊院の小書院の奥にあり、茶道口、給仕口は小書院の裏手から入ります(拝観者も)。

松琴亭は、桂離宮にある茅葺きの建屋で、良く知られている市松模様の襖がある「一の間」に続く「二の間」のさらに奥に、茶室があります。茶室は八窓軒と同様の三畳台目です。

茶室の天窓、住まいの天窓

桂離宮松琴亭:茶室の入口(躙口)は写真の左側、写真ACから

 

如庵は、17世紀に京都建仁寺に建てられ、20世紀に東京、さらに神奈川に移築され、現在愛知県犬山市に移された国宝茶室です。二畳半台目と呼ばれる平面構成で、茶道口と給仕口を一つにして、鱗板と呼ぶ三角平面床で動線を処理しています。

 

それぞれの茶室「天窓の位置」

さて、それぞれの天窓(突上窓)の位置です。

八窓軒松琴亭は平面形は一見同じ(三畳台目)で、窓も同じように八つありますが、天井構成がまるで異なり、八窓軒客座の庭寄りが斜め天井(掛込天井、化粧屋根裏)なのに対して、松琴亭点前座の上が斜め天井です。

そして、いずれもその斜め天井のところに突上窓を設けています。つまり、八窓軒では、客座に空からの明かりが注がれるのに対して、松琴亭では点前座を照らしています。

松琴亭の点前座は、両側に隣室があり奥まった感じですが、実際はその背後に中庭があり、そこに面する壁に上下二段の窓(下地窓、連子窓)があり、さらに側面にも窓(風炉先窓)があるので、点前座の採光をかなり意識した窓構成となっています。

一方、如庵では、斜め天井は庭寄りにあり、突上窓客座の上に設けていて、どちらかというと八窓軒に近い天井構成となっています。

茶室の天窓(突上窓)斜め天井(掛込天井、化粧屋根裏)に設けることが一般的で、斜め天井をどう向けるかによって、天窓の位置が変わります。

住宅のトップライトは、「居室」化のための法的な制約をクリア(採光無窓回避)するために、位置や大きさが決められてしまいますが、茶室の突上窓茶室空間の構成手段として、他の窓とのバランスの中から天井のかけ方とともに決めてゆくもののようです。

茶室住宅居室それぞれの天窓、まるで異なり本来ほとんど無縁のものですが、結果的に「降り注ぐあかり」の効果をそれぞれの空間に与えるという意味で、比較してみるのも面白いのではないでしょうか。

 

茶室の天窓、住まいの天窓 ~ ディテール比較試論

茶室の天窓、住まいの天窓

(左)桂離宮松琴亭茶室突上窓断面詳細図(東京都立中央図書館)よりN研模写、(右)日本ベルックスHPを参考にN研作図

 

偶然なのかも知れませんが、公開されている松琴亭茶室天窓の実測図と、現代のトップライトの納まり図に類似性を感じるのは、私たちN研(中尾建築研究室)だけでしょうか。

N研-中尾-
今回はここまでといたします。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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