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木造住宅を陰で支える「金物」たち、点検しなくて大丈夫?(在来工法と金物工法)

住宅の金物

今回は、木造住宅を陰で支えている金物についてのお話です

1.木造住宅を裏で支える「金物」たち

木造住宅は、木でできています・・・あたりまえですね。

でも、最近の一般的な木造住宅というのは、実は「木と金物でできています

たとえば、標準的な家一軒に使われるクギの本数は、約76,000本・・・という試算には、ちょっと驚きますね。(出典:マックス株式会社ホームページ「ネイラ物語 家一軒に使用される釘」 https://www.max-ltd.co.jp/index.html )

住宅の金物

家一軒を建てるのに使われるクギの数は、おそらく想像以上でしょう

 

しかし、新築でも、中古(既存)でも、できあがってしまった住宅では、こうしたクギも含めて、住宅の金物(かなもの)を目にすることは、あまり多くありませんね。

今回は、木造住宅を陰で支えている金物についてのお話です。

金物を見ることができるのは、工事の段階では、おもに建方(たてかた=組上げ)の時から、仕上工事の前までです。そして、できあがった住宅では、たとえば天井点検口から天井裏診断をする時、そう、住宅診断のときですね。

N研-中尾-
ところで、そもそも金物と言われてもピンとこない、と言う方も多いかも知れませんね。

住宅の「金物」とは、柱や梁などの接合部を結合し、補強するために取り付ける金属部品のことです。では、ざっと写真で視覚的にご説明いたしましょう。(金物の観点からの工法分類などは、後ほど)

たとえば、木造住宅が上棟したときまず目にするのは、土台と柱、柱と梁、すべて真新しい木材ですが、そのあちこちが真新しい金物で結びつけられています。クギビスボルトナットはすぐお分かりでしょうけれど、独特のかたちをした金属もいろいろあります。

 

住宅の金物

(左)屋根下の「羽子板ボルト」や「かすがい」、(右)柱を固定する「ホールダウン金物」や土台を固定する「スクリュ-ナット」など

在来工法の住宅では、天井を見上げると、梁の両端部の羽子板ボルトが目に付きます。地震の時、梁が外れないように、引っ張っておく金物で、ボルトと座金とナットで一組です。この金物だけでも、けっこうな数があります。屋根の小屋組を支える束の根元には、かすがい。言葉では知っているけれど、という方も多いかも知れませんね。

住宅金物

羽子板金物、これで一組

「引っ張る」と言えば、基礎から土台を縫って柱を固定するホールダウン金物。これも地震の時、柱が土台から抜けてしまわないように固定しておくための、ボルトとナット、そして柱にビス留めされている金物、これで一組です。

基礎と土台を固定するアンカーボルト用のスクリューナット(座金)。これは床の合板の下に隠れることも多いので、ちょっと見つけにくいかも。ボルトとナットが、土台の上の面からはみ出さないように、ナット自体で土台の横木を座堀りして、ボルトに固定します。

 

住宅の金物

(左)水平方向に歪まないようにする「火打金物」、(右)柱上部の金物、「筋交い金物」「コーナー金物」「両引き羽子板金物」などが見えます

あるいは、屋根下で水平方向を固める火打金物(ひうちかなもの)とそれを固定するボルトとナット(あるいはビス)も見えますね。在来工法でも、2階の床などは厚手の構造用合板で固めるようになり、火打を設けないことも多くなりましたが、屋根下にはこの金物が使われます。

そして、柱の頭のところで梁や筋交いが集まるところなどには、良く見ると、上の写真のようにいろいろな金物が使われていたりします。

 

住宅の金物

(左)梁どうしをつなぐ「ひら金物」、(右)1階と2階の柱をつなぐ「ボールダウン金物」と「筋交い金物」の取合い

N研-中尾-
まだまだ他にもいろいろありますが、まずは住宅用金物のイメージ、つかんでいただけたでしょうか。

さて、この金物ですが、1995(平成7)年に起きた兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の教訓から、2000(平成12)年に建築基準法の改正があり、木造住宅については、構造材とその場所に応じて継手・仕口(=材の接続方法)の仕様が決められて、以降、今日のように金物による補強が必要となりました。

木造住宅に使用する「接合金物」は住宅の安全性や耐震性に関わるため、「平成12年建設省告示第1460号」に規定された仕様のものを使わなければなりません。告示の要求を満たすものとして、公益財団法人日本住宅・木材技術センターが定める接合金物認定規程による接合金物規格(ZマークCマーク表示金物)や同等認定品(Dマーク)、性能認定品(Sマーク)などがあります。これらの製品には、それぞれのマークが刻印されていて確認できるものもあります。

 

住宅の金物

接合金物の刻印マーク、(左)新築現場にて、(中)中古住宅にて、(右)ボルトの頭にも刻印

 

このように躯体(骨組み)の接合を担う金物ですが、上棟を終え、工事が仕上げに進むと、躯体とともに壁の内側天井の裏側に隠れてしまい、住宅の完成後は、残念ながら、住み手の意識からは遠のいてしまいますね。

住宅の金物

壁の内側、天井の裏側・・・住宅が仕上がってしまえば、住み手が意識することはあまりありませんね

 

2.金物をめぐる、うわさの「事件」から・・・金物の「緩み」について

このように、住み手の方には関心があまり高くない住宅の金物ですが、この「金物」に関連して、ちょっとした「事件」が関係者のあいだで話題となったことがあります。

それは、木造住宅を建てた個人の方が、竣工内覧会、つまり竣工時の検査をある住宅診断(インスペクション)事務所に依頼した時の顛末です。(当事務所ではありません。念のため)

天井点検口から、屋根裏を確認した診断者が、点検口付近で、ナットの緩み(締め忘れ)を1箇所見つけて、その旨を依頼者に報告。それを聞いた依頼者様、そのことが不安になり、すべての金物の再点検をするまでは、この住宅引き取れない、となって大騒ぎになったとのこと。

住宅の金物

天井点検口から屋根裏を覗くときは、金物が緩んでいないか確認しましょう

 

N研-中尾-
あくまで伝聞のお話ですので、詳しくは承知していませんが、あり得るお話ではありますね

この話には、さらに後日談があって、住宅供給者側では、内覧会直前には、せめて天井点検口付近の金物については締め忘れがないか、再チェックするように、という内部通達が出たとか、出なかったとか。

住宅の金物

ネジ(ナット)のゆるみ(締め忘れ)は意外とあります(この本文のものではありません、念のため)

 

この「事件」にも見られるような、金物の緩みは、特にネジナット)のところで起きます。ここでは、その原因となりそうなものを考えてみましょう。

  • ネジ(ナット)の締め忘れ
  • ボルトの長さ不足
  • 木痩せ」によるネジ(ナット)の緩み
  • 繰り返しの微振動によるネジ(ナット)の緩み

ネジ(ナット)の締め忘れ

上の「事件」の原因ですが、この「締め忘れ」は意外にあります。これは躯体(骨組み)工事が完了した時点で、全数確認することが大切です。

上の検査を依頼者した方が、全数確認をし直せ、と怒ったのは、無理難題などではなく、むしろ「我が家」の工事中のチェック体制、つまり、その現場での工程内検査がどのように行われていたかの疑義からだったのかも知れません。たったひとつの不具合発覚が、その工事全体への不信感を引き起こしてしまったわけですね。

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その意味で、「せめて天井点検口付近の金物だけは・・・」というような対応の仕方では、まさに本末転倒ですね。
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ホールダウン金物のネジ(ナット)締め忘れ

 

ボルトの長さ不足

締め忘れ以前に、「ボルトの入れ忘れ」というのも論外ですが、反対に、ボルトがありナットも締められているのに、そのボルトの長さが足りない、というのも問題です。少なくとも、ボルトのネジ山3つ分はナットから出ていることが必要です。

何とかボルトの先端に止まっているだけ、といった事例もあります。これでは、何らかの力でナットが少し緩めば、脱落の恐れがありますね。

住宅の金物

(左)羽子板金物用ボルトの長さ不足、(右)ホールダウン金物の長さ不足

長さ不足のボルトは、長いものに取り替える必要があります。こうしたボルトは、躯体の建て方(棟上げ)の時に取り付けられることが多く、かなり騒然とした一連の作業の直後に、ちゃんとチェックが行われたかどうかの問題、と言えますね。

問題のあるボルトが、壁の内側、天井の裏側に隠れてしまわないうちに、できれば躯体工事の間見つけられれば、大工さんが簡単に交換してくれます。しかし、仕上げ工事が進んでからでは、簡単に交換できなくなります。

つまり、次の工事工程に進む前のチェックをルール化して、ちょっとした工程内検査が行われていれば、後々の大きな是正工事は不要になりますね。

次の写真は、内装工事に入る前に、ボルト長さの不足に気付いて、その場で取り替えた例です。

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何だ、まるで簡単な話じゃないか・・・と思われるかも知れませんが、もし気付かないまま天井が張られてしまえば、将来この状態で毎回の地震を受けていたわけですね。
住宅の金物

ボルトの長さ不足の是正、次の工程に移る前に気付いて取り替えた例

 

「木痩せ」によるネジ(ナット)の緩み

先ほどの「事件」は金物の締め忘れが原因だったようで、それはあってはいけないことです。しかし、すべての金物を締め直しをしたとしても。やがて、ネジ(ナット)が緩んでしまうことがあります。

木痩せ」と呼ばれる、木部の乾燥収縮に伴うもので、よく中古住宅の小屋裏(屋根裏)や天井裏で見かけることがあります。いちばん目立つのは、羽子板金物を固定するボルト・ナットの緩みです。

住宅の金物

(右)中古住宅の天井裏で見かけたナットの緩み、(左)その拡大

この「木痩せ」は新築住宅でも起きます。

新築住宅と言っても、そこで使われる木材が、含水率の低い乾燥材(人工乾燥材=KD材)か、そうでない一般材木かによっても異なります。

最近の新築住宅では、乾燥材(KD材)を使うことが多くなりましたが、コストの関係から未乾燥材(グリーン材)を使うケースもあります。

含水率の高い未乾燥材の場合、乾燥して含水率が下がるにつれて乾燥収縮を起こします。これが「木痩せ」の原因です。

そして、乾燥が進み含水率が約15%になると平衡状態になり安定します。工事中に多少雨に濡れても、季節が梅雨時でも、含水率は変らなくなり、それ以上は乾燥収縮がない状態になります。

木造住宅に使われる金物で、アンカーボルト、羽子板ボルト、ホールダウン金物、その他のねじ(ナット)部分は、こうした木材の乾燥収縮により緩むことがあります。また、ボルトの部分だけでなく、木材の仕口部分(接続部分)も、乾燥収縮によって隙間ができます

住宅の金物

「木痩せ」による金物の緩み(説明のため、部分的に寸法を誇張して表現してあります)

この緩みに対しては、「増し締め」によって対応することになりますが、未乾燥材の場合、工事期間中にも乾燥が進行するため、内装工事に入る前に増し締めをしてもらうことに止めるのが現実的と思います。

以上をまとめて、新築住宅で金物が緩まない(緩みにくい)ための木痩せ対策としては、

  • 乾燥木材(KD材)を使用する
  • 木痩せ対応の金物(緩み止めワッシャーなど)を使用する
  • 無垢材でなく集成材を使用する
  • 内装仕上げ前に「増し締め」してもらう
  • 金物接合の工法(後述)を選ぶ

などがあります。ただし、いずれもコストはアップします。

 

住宅の金物

木痩せによる金物の緩みを抑制する対策を考えておく必要がありますね

 

繰り返しの微振動によるネジ(ナット)の緩み

先ほどの「木痩せによるネジ(ナット)の緩み」に関して、「木材の性質上木痩せは起こるものであり、金物のナットが緩むことは問題ない」という意見もあります。あるいは、「緩みは理論的には問題ないが、気になるなら増し締めをしてもらうと良いのでは」と言ったような玉虫色の意見もよくあります。

この「緩んでも問題ない」という見解は、ボルト・ナットの付く金物を一括りにしていることと、住宅という数十年以上健全であるべき躯体を支える部品であることについて、いかがなものかなと思います。たとえば、羽子板金物のボルト・ナット(直角の2方向にありますね)や、火打ち金物を留めるボルト・ナット(これも2方向に付きますね)などを思い浮かべてみると、地震や強風時には、ボルトの軸方向への引っ張り荷重だけでなく、直角方向のせん断荷重も受けますね。そして、何十年にも渡って繰り返し受ける微振動の問題もあります。

N研-中尾-
確かに、在来工法に使われる金物は、主に部材の接続箇所の補強として使われるもので、たとえ仮にすべてが緩んだからと言って、直ちに建物が倒壊するというものではありません。羽子板金物引き寄せ金物は建物が大きく変形するような時の、材の脱落防止の意味合いが強いということですね。

しかし、いったん緩んでしまったナットは、繰り返しの微振動によってその緩みが拡大するということが考えられます。(「金物が錆びるので、緩みの拡大は抑えられる」という、やや強引な意見もなくはないようですが。)そして、緩むことで地震・強風時など振動が起こりやすくなり、緩みが拡大した分だけ建物の揺れは大きくなるでしょう。それを、安全上問題なし、と割り切ることで良いのでしょうか。

木材の性質上縮むのが当然、というような経験論的な議論もありますが、材の端部どうしを緊結するという金物の本来の役割も無視できませんね。

また、木痩せの問題からは離れますが、繰り返しの微振動に関連して、ホールダウン金物の緩みの問題があります。この金物もまた、上記のような乾燥収縮とは異なりますが、体に感じない地震や風などで次第に緩んでしまうことが確認されているそうです。

住宅の金物

(左)壁の内側に隠れるホールダウン金物、(右)出典:(株)カナイ 製品カタログ「ホールダウン点検口」

しかし、天井裏の金物と異なり、この金物の多くは壁の内側に隠れてしまい、緩みの有無を確認することが一般には困難です。

そのため、室内壁に設ける専用の点検口を扱っている金物メーカーもあります。

 

3. もうひとつの「金物による木造住宅」・・・「金物工法」について

ここまで、在来工法における補強金物についてお話ししてきました。「在来工法」と漠然とした表現しましたが、「在来軸組工法」のことですね。

ここでおさらいですが、以前このコラム(ブログ)で、木造住宅には、大きく「軸組工法」と「ツーバイフォー工法(枠組壁工法)」があります、というお話をしました。

参考木造 軸組工法と 2×4 (ツーバイフォー) その違いとは?

軸組と2×4~今回は、よく知られたこの二つの工法について考えます 目次1 1.定番の比較テーマ:木造の「軸組工法」対「2×4(ツーバイフォー)工法」2 2.異なる土俵 ~ ふたつの木造工法の成り立ちの ...

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そして、前者の木造「軸組工法」ですが、これをさらに「使用する金物」という観点から分類すると、表のように「在来工法(仕口金物補強工法)」と「金物工法(ドリフトピン工法)」に分けられます。

住宅の金物

木造住宅の工法(ただし、分類方法は他にもいろいろあります)

 

N研-中尾-
金物」という用語があちこち出てきて、ちょっと分かりにくいかも知れませんが、順にご説明してまいります。

前の章までお話ししてきた内容は、ここで言うところの「在来工法(仕口金物補強工法)」のところです。木造軸組工法では、まだまだ主流と言っていい工法です。中古(既存)住宅であれば、圧倒的にこの工法です。

しかし、新築住宅で、ハウスメーカーの展示場などに行くとツーバイフォー(とか、ツーバイシックス)をセールスポイントとするモデル住宅か、そうでなければ、「○○工法の家」などという名前の、いかにも最新技術の工法のようにうたったモデル住宅を紹介されるかも知れません。分類的には「金物工法」の応用編でしょうけれど、当社独自開発の先端○○工法のネーミングの方が、ありがたみがありますからね。実際、各社技術開発して認定を受けているでしょうから。

「在来工法」と「金物工法」の違い

そうした事情はさておき、まず簡単に「在来工法」と「金物工法」の違いをご説明します。

両者をイメージ的に表現すると、下の図のような感じでしょうか。お分かりになりますか。

 

まずは見た目の違いについて。「在来工法」は、これまでご説明したように、柱と梁、梁と梁どうしのそれぞれ外側に金物が見えていました。

一方、「金物工法」は、ほとんど木材の内側に隠れていて、表面にはわずかな切り口スリット)しか見えません。よく見ると、材の横に小さな穴があります。この穴は「ドリフトピン」と呼ばれる鋼製のピンを打ち込んだ跡です。

住宅の金物

「金物工法」の金物製品例  出典:BXカネシン(株) 製品カタログ より

 

この外観上の違いは、「在来工法」と「金物工法」の「仕口に対する考え方の違いによるものです。ここで、「仕口」とは、木材どうしの結合部のことです。

在来工法」では、材木じたいを仕口加工して接続し、金物で補強します。つまり、木材どうしに凹凸をつくり、それを嵌めあわせます。一方、「金物工法」では、木材の欠き込みをなるべくしないで、仕口そのものを金物にします

在来工法」で、たとえば通し柱(1階から2階までを1本の柱とするもの)を使う場合、梁の接合部で、柱に「彫り込み」を造り、梁の仕口を受け止めます。このため通し柱には断面欠損が生じることになります。柱につながる梁が、2方向、3方向となるにつれ、断面欠損が大きくなり、その柱は弱くなります。

反対に、「金物工法」のメリットは、木材部分の断面欠損を少なくでき、木材どうしを強固に結合できることです。たとえば通し柱では、金物を取り付けるボルトの穴があくだけです。また、金物が柱や梁の外部にほとんど露出しないという、見栄え上の特徴もあります。デメリットの一番はこうした金物のためにコストがアップすることです。

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つまり、「在来工法」の金物はあくまで補助的に木材の接続部を固めるのに対して、「金物工法」の金物はそれ自体でもっと主体的に木材どうしを接続する・・・というような違いです。言葉では分かりにくいので、図にしてみましょう

次の図は、「在来工法」と「金物工法」の比較です。よく金物工法のサイトなどは、「在来工法」の弱点として「断面欠損」を強調して、図の(C)のような柱の断面図が示されたりします。でも、はじめての方には何のことかお分かりにならないかも知れませんね。横から見ると(A)のようになるというわけです。(C)も(A)も色の濃い部分が欠損部です。

「通し柱」につながる梁が四方にあるのが「四方差し」です。これに対して「金物工法」は図の(B)です。柱の側面に、梁受け金物を取り付けるので、柱にはそれを固定するボルトが貫通するだけで欠損は極めてわずか、というわけです。

住宅の金物

(A)(C)通し柱の「断面欠損」、(B)金物工法の通し柱、(D)通し柱を使わない在来工法

 

しかし、現在の在来工法で(C)のような接合方法をするような例は稀でしょう。伝統的な住宅で、太い柱を使うような場合ならあるかも知れません。現実的には、在来工法は「仕口金物補強工法」で、むしろ(D)のような「梁勝ち」として、上下の柱を引き寄せ金物で緊結する方が多いと言えます。

つまり、「金物工法」は柱の横に金物を介して梁をつなぐこと(柱勝ち)が得意な工法で、「在来工法」は柱の上に梁を載せて(梁勝ち)金物で補強する工法、であると言えます。むしろ、この両者を比較するほうがフェアなのではないでしょうか。

金物工法」は、比較的新しい工法ですが、それをセールスポイントとするハウスメーカーでは、独自の金物工法を開発し、認定を取得して、それぞれの特徴を強調しています。そして、各社独自のネーミングをつけているので、ちょっとわかりずらいかも知れません。(ちなみに、ウィキペディア(Wikipedia)では「ドリフトピン工法」と呼んでいますが、その応用として、各社の工法の名前が紹介されています)

 

金物工法の注意点

さて、このように断面欠損が少なく強固な仕口とすることができ、しかも金物はほとんど目立たない、というメッリトのある「金物工法」は、それを紹介、宣伝する多くのサイトで「在来工法」に対する優位性が強調されています。

ここではそれらを否定はしませんが、ただしこの工法に対する注意点もあります。

仕口の強固さをうたう「金物工法」ですが、梁が負担している荷重を常時金物が受け続けている点には注意しておく必要があります。「在来工法」では、金物がない状態でも建物は自立できますが、「金物工法」では、金物がなければ自立できません

また、先ほど、通し柱の断面欠損とお話ししましたが、「在来工法」では、通し柱以外では、むしろ柱の上に梁を載せて金物で補強してゆくイメージです。しかも、最近では隅柱も含め通し柱を採用しない在来工法も増えてきました。「金物工法」では一般に、柱の側面に金物を取り付け、そこに梁材の先端のスリット部分をはめ込んで、ドリフトピンを打ち込み固定します。

住宅の金物

ドリフトピン

そして、「金物工法」の金物は、いったん固定されて、その住宅が仕上がってしまえば、多くの場合取り外して確認することは困難です。「金物工法の金物は決して緩まないという前提で建てられます。そのため、材木を集成材使用に限定されることも多く、長期にわたり木痩せなど材木の側の状態の変化は起きないという前提なのでしょう。

金物工法」は1990年代頃に登場し、95年の阪神・淡路大震災を契機として、次第に業界の中で注目されるようになってきました。その技術的背景には、プレカット(機械による仕口・継手の加工)技術の精度の向上があり、また工場加工の範囲が増え、大工の技術差に左右されにくくなったことなどが挙げられます。熟練した技術を要しないことから、職人不足問題への対応としても期待されています。

しかし、本格的普及からまだ経過年数が少ないため、実際の経年劣化のデータが乏しいという点もおさえておく必要があります。たとえば、金物に対する防錆(サビ)処理について、各社独自の処理を行っていますが、その防錆性能の劣化に対する実証データはまだほとんどなく、実験室での試験の域に止まっていると言われています。

金物工法」は木痩せを避けるため、集成材の採用を前提とすることが多い工法です。集成材とは薄い木材を貼り合わせて強度のばらつきを補いながら強度を高めた木材製品ですが、その接着剤長期の経年変化についても、まだまだデータ不足のようです。

木造ラーメン構造について

今回は、工法分類の最後の「木造ラーメン」には触れませんでした。こうした分類方法には異論もあるところかも知れませんが、たとえば、ビックフレーム構法(住友林業)やSE工法などの構・工法は、「ラーメン構造」であることを強調しています。(ウィキペディア(Wikipedia)では、ビックフレーム構法をドリフトピン工法の応用に含めています)

接合部を強固にして、柱・梁のフレームだけで地震力に耐えられる構造です。耐力壁を使わない(あるいは、通常より壁の量を少なくできる)ので、鉄骨造や鉄筋コンクリートのようなイメージで、大開口や大スパンを木造で実現できる、といった点がセールスポイントです。木造としては特殊な部類なので、特別な認定を受けた工法で、構造設計、品質管理をしっかり行うことが前提となっています。

この木造ラーメン構造の接合部は、鉄骨造や鉄筋コンクリートのような完全な剛接合ではなく、半剛接合と呼ばれます。集成材の規格が制定され、半剛接合のシステム開発が進められ、中大規模木造建築物で採用されるようになり、一般住宅でも使われるようになりました。いずれ、そうした木造建築も含めてお話しできればと思います。

 

4.隠れる金物・・・まとめにかえて

以上のように、木造住宅の「金物」と言っても、さまざまな種類があります。

そして、これらの金物は、工事が進むと、壁の内側天井の裏側に隠れてゆきます。あるいは、工法によっては木材の内側に埋め込まれて、見えなくなるものもあります。

N研-中尾-
材木が痩せるのは自然なこと、それで金物が緩むのは仕方ない・・・そういう意見もありますが、住宅の長い寿命の中で、時々は点検口から観察してみるのが良いのではないでしょうか

伝統木造ともいうべき、古い木造建築では、使用されている木材の太さが全然違いますね。断面欠損などを気にする必要もないほどの太さでした。そして金物はほとんど不要でした。それに比べると、今の木造住宅の柱・梁は、いかにも華奢(きゃしゃ)です。それでも、全国で建てられていますね。そうした細い材を使って、木材と金属という異質のものの組み合わせで、木材だけでは足らなかった構造的弱点を補っているわけですから、経年的な変化に関心を持っていただきたいと思う次第です。

住宅の金物

隠れる金物・・・屋根下の金物は断熱材、そして天井材の裏側に隠れてゆきます

それでは、今回のまとめです。

①「木造軸組工法」には、大きく、「在来工法(仕口金物補強工法)」と「金物工法(ドリフトピン工法)」があります。これらは、阪神・淡路大震災(1995年)を契機にその必要性が認識され、今世紀になって本格的に採用されるようになりました。

②「在来工法」と「金物工法」は、ともに「金物」を使用しますが、「仕口」に対する考え方に違いがあります。「在来工法」は、材木に仕口加工をして接続し、金物で補強する。一方、「金物工法」では、仕口じたいを金物として、その金物がメインとなって木材を接続します。

③「在来工法」の新築住宅で金物が緩まない(緩みにくい)ための木痩せ対策としては、

乾燥木材(KD材)を使用する

木痩せ対応の金物(緩み止めワッシャーなど)を使用する

・無垢材でなく集成材を使用する

・内装仕上げ前に増し締めしてもらう

金物接合の工法を選ぶ

などがあります。

④「金物工法」では、強固な仕口を形成する接合金物に常時力が加わっているので、金物の緩みが生じないように、木痩せの少ない集成材に使用を限定されることがあります。(ただし、無垢材対応可能とうたう製品もあります)

⑤「金物工法」は、「在来工法」に比べて、断面欠損を少なくできることや、結合部を強固にできることなどの大きなメリットがあります。ただし、金物によるコスト増があること、新しい工法であるため経年劣化の実証データが乏しい点などには注意する必要があります。

 

N研-中尾-
以前、「軸組工法」対「ツーバイフォー」の比較のところでもお話ししましたが、工法から住宅を選んでゆくのではなく、お住まいにどのような性能(たとえば耐震等級など)を求め、どのような空間(たとえば大スパンの空間など)を求めるのか、と言った観点から選んでゆきましょう。

 

 

まずは「お住まいも健康診断を」・・・これが私たちN研(中尾建築研究室)のおすすめ

おすすめ?必要?不要?ホームインスペクションとは一体?

お住まいも健康診断を

N研-中尾-
住宅を陰で支える「金物」は、普段意識されにくいものです。しかし、木造住宅は「木と金物」でできていることをお忘れなく。工事の過程で、また、住み始めてからも関心を持ち続けたいものですね。そして、住宅も定期的に「健康診断を」というのが、私たちN(中尾建築研究室)のおすすめです。

お住まいの「質」への意識の高い方々を、私たちは微力ながら応援したいと考えています。

 

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